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癌生物学 シグナル伝達ネットワークの不均一性を解明する

CANCER BIOLOGY:
Revealing Signaling Network Heterogeneity

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2004, Issue 243, pp. tw267, 27 July 2004.
[DOI: 10.1126/stke.2432004tw267]

要約 : Irishらは、ヒト癌の遺伝的性質や臨床表現型の差異が、シグナル伝達ネットワークの応答性の変化に相関するかどうかの決定を試みた。著者らは、マルチパラメータフローサイトメトリーを用いて、複数の患者から得た急性骨髄性白血病(AML)細胞、正常CD33+細胞、2種類の培養細胞株(HL-60 AML細胞およびU937リンパ腫細胞)中の各種リン酸化タンパク質を定量したところ、30個のAML患者サンプルにおいて、転写制御因子STAT1、STAT3、STAT5、STAT6、細胞外シグナル制御性プロテインキナーゼ1、2(ERK1/2)、ストレス活性化プロテインキナーゼp38の定常リン酸化状態にかなりの差異があることを突き止めた。さらに、これらのAMLサンプルは、測定したタンパク質のリン酸化状態の変化に関して、各種サイトカインに対する応答性が異なっていた。著者らは、教師なしクラスタリングアルゴリズムを用いて、AML患者サンプルを定常リン酸化状態およびサイトカイン刺激に応答した変化に基づいて4グループに分類した。これらの4グループのそれぞれにおいて、特定の細胞遺伝特性、Flt3変異(Flt3は受容体チロシンキナーゼで、この受容体を介した異常なシグナル伝達はAML患者の30%にみられる)、CD15の高発現、化学療法への応答が生じる頻度を解析した。この解析から、リン酸化タンパク質の生物学的特性の特定の変化は、臨床表現型や遺伝表現型に統計的に相関していることが明らかになった。この単一細胞解析で、癌細胞の不均一性のメカニズムを特定の異常なシグナル伝達ネットワークに対応させることが可能で、メカニズムに基づいた治療法の開発につながる。

J. M. Irish, R. Hovland, P. O. Krutzik, O. D. Perez, Ø. Bruserud, B. T. Gjertsen, G. P. Nolan, Single cell profiling of potentiated phospho-protein networks in cancer cells. Cell 118, 217-288 (2004).

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