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行動 ママはいつも子供を最もよく舐める

BEHAVIOR:
Mom Always Licked You Best

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2004, Issue 244, pp. tw276, 3 August 2004.
[DOI: 10.1126/stke.2442004TW276]

要約 : リッキング、グルーミング、背中を丸めた姿勢での子供の世話(LG-ABN)をよく行う母親に育てられたラットは、こうした行動をあまり行わない母親に育てられたマウスより恐怖心が少なく、ストレスに応答しにくい成体になる。これらの習性は、成体ラット海馬におけるグルココルチコイド受容体(GR)の発現増加を伴う。LG-ABNは、セロトニン作動性の活性を引き起こすことにより、環状アデノシン一リン酸(cAMP)-プロテインキナーゼAのシグナル伝達経路を活性化し、転写因子NGFI-A(神経成長因子誘導タンパク質A)を発現させる。しかし、子ラットにおけるシグナル伝達の増加が、成体ラットに分子変化や行動変化を引き起こす機構は明らかでない(Sapolsky参照)。Weaverらは、LG-ABN値が低い母親に育てられたラットに比べ、高LG-ABNの母親に育てられた成体ラットの海馬組織由来のDNAでは、GRプロモーターのNGFI-A結合部位の周辺領域のメチル化が減少していることを突き止めた。メチル化状態の変化は生物学的親子関係とは独立であり、LG-ABNにより誘導される行動変化の臨界期のあいだに生じていた。クロマチン免疫沈降分析により、高LG-ABNの母親から生まれた成体マウスの海馬クロマチンにおいて、ヒストンH3-K9のアセチル化およびNGFI-Aの結合が増加していることが明らかになった。ヒストンデアセチラーゼ阻害剤であるトリコスタチンA(TSA)を脳室内に注入したところ、LG-ABN値が低い母親の子供でアセチル化の増加がみられ、低LG-ABN、高LG-ABNの子供のいずれにもメチル化の減少がみられた。また、TSAはGRの発現を増加させるとともにストレスに対する副腎皮質反応を減少させ、その結果これらの点で高LG-ABNの子供と低LG-ABNの子供との差がみられなくなった。以上より、これらの持続的な母性行動の影響は、DNAメチル化状態の変化に仲介されると考えられ、薬理学的に可逆である。

I. C. G. Weaver, N. Cervoni, F. A. Champagne, A. C. D'Alessio, S. Sharma, J. R. Seckl, S. Dymov, M. Szyf, M. J. Meany, Epigenetic programming by maternal behavior. Nat. Neurosci. 7, 847-854 (2004).

R. M. Sapolsky, Mothering style and methylation. Nat. Neurosci. 7, 791-792 (2004).

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