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ヒストン アルギニン脱イミノ化を介した転写の制御

HISTONES:
Regulating Transcription Through Arginine Deimination

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Sci. STKE, Vol. 2004, Issue 250, pp. tw321, 14 September 2004.
[DOI: 10.1126/stke.2502004tw321]

要約 : DNAを周りに巻き付けるタンパク質であるヒストンの翻訳後修飾は、クロマチン構造および機能を制御する役割を持つ。たとえば、エストロゲンによる転写活性化には、ヒストンH3のアルギニンメチル化が関係している。アルギニンメチル化サイクルは、エストロゲン応答遺伝子活性化時に観察されているが、メチル化消失のメカニズムは依然不明である。Cuthbertらは、ウエスタン分析、切断H3のN末端アミノ酸配列解析、質量分析を組み合わせて用い、PADI4(ペプチジルアルギニンデイミナーゼ4)が、H3テールのアルギニンArg2、Arg8、Arg17、Arg26のシトルリンへのin vitroにおける変換を触媒することを示した。MCF-7細胞においてPADI4を過剰発現させたところ、H3テールのアルギニンはin vivoにおいても脱イミノ化されていることが示された。アルギニン脱イミノ化は、メチルトランスフェラーゼCARM1によるH3メチル化を阻害し、PADI4はジメチル化アルギニンを脱イミノ化できなかったものの、モノメチルアルギニンを脱イミノ化したようであった。PADI4と、エストロゲン受容体リガンド結合ドメインあるいは甲状腺ホルモンリガンド結合ドメインのいずれかを近傍のDNA結合ドメインを標的とする融合タンパク質を用いてVEGF-Aプロモーターに会合させたところ、PADI4はVEGF-Aのホルモン依存性の転写活性化を阻害した。エストロゲンは、PADI4のMCF-7細胞含有量を増加させ、クロマチン免疫沈降(ChIP)分析によって、PADI4のpS2プロモーターへの会合を活性化し、同時にアルギニンをシトルリンに脱イミノ化し、プロモーターからRNAポリメラーゼIIを失わせることが示された。以上より、著者らは、PADI4によるアルギニン脱イミノ化は、アルギニンメチル化およびその後の転写活性化に拮抗する新たなホルモン感受性のメカニズムではないかと提唱している。

G. L. Cuthbert, S. Daujat, A. W. Snowden, H. Erdjument-Bromage, T. Hagiwara, M. Yamada, R. Schneider, P. D. Gregory, P. Tempst, A. J. Bannister, T. Kouzarides, Histone deimination antagonizes arginine methylation. Cell 118, 545-553 (2004). [Online Journal]

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