• ホーム
  • 発生 成長と発生時期を一体化する

発生 成長と発生時期を一体化する

DEVELOPMENT:
Integrating Growth with Developmental Timing

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2004, Issue 254, pp. tw361, 12 October 2004.
[DOI: 10.1126/stke.2542004tw361]

要約 : 発生期には、時間空間的な手がかりが細胞の運命および組織の構成を制御する。BatemanとMcNeillは、ショウジョウバエ(Drosophila)の眼にパターン形成異常を引き起こす変異をスクリーニングすることにより、結節性硬化症複合体1(TSC1)をコードする遺伝子を同定した。パターン形成異常をさらに解析したところ、光受容細胞の分化が未熟なため組織の構成が阻害され、その結果として個眼の過剰回転がもたらされることが示された。上皮成長因子リガンドspitzは光受容細胞の分化に関与する既知の経路を活性化することが知られているが、tsc-/-細胞においてspitzの分泌は明らかに正常であった。これは、tsc-/-細胞および野生型細胞で、リン酸化された細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK)および各種の下流成分がほとんど同程度であったからであると考えられる。分化マーカーの早期獲得は、TSC1と同様にTORおよびインスリン受容体により調節される経路の負の制御因子であるホスファターゼPTENを不活化する変異でもみられた。インスリン受容体経路を介したシグナル伝達を阻害する変異を持つ細胞において、個眼の分化時期を解析したところ、光受容細胞の分化は遅くなったが、この経路を過剰に活性化したところ、早期に分化することが明らかになった。同様の発生時期の変化は、末梢感覚器官である聴覚性器官(chorodontal organ)でもみられたが、蛹の羽毛形成ではみられなかった。MycまたはサイクリンDおよびサイクリン依存性キナーゼ4(CDK4)を過剰発現させても同じパターン形成異常は生じなかったことから、時期の変化は細胞の大きさが変化した結果ではないようであった。以上より、栄養状態に加えて発生配位のメカニズムとして、成長を制御する経路も発生時期に寄与するようである。

J. M. Bateman, H. McNeill, Temporal control of differentiation by the insulin receptor/Tor pathway in Drosophila. Cell 119, 87-96 (2004). [Online Journal]

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

バックナンバー一覧へ