• ホーム
  • 細胞生物学 Srcキナーゼがスイッチを入れる

細胞生物学 Srcキナーゼがスイッチを入れる

CELL BIOLOGY:Src Kinases Flip the Switch

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2004, Issue 257, pp. tw390, 2 November 2004.
[DOI: 10.1126/stke.2572004tw390]

要約 : 血小板由来成長因子受容体(PDGFR)などの成長因子受容体およびインテグリンは、相互作用しており、成長因子の受容体への結合により様々な応答を示す。たとえば、生理的濃度のPDGFに対するオリゴデンドロサイトの応答は、オリゴデンドロサイトに発現するするインテグリン(αVβ3またはα6β1のいずれか)および細胞外マトリックスの組成に応じて異なる。Colognatoらは、この研究をさらに進展させ、Srcチロシンキナーゼファミリーのメンバーにより、PDGFに対する初代培養オリゴデンドロサイトの応答が制御されていることを示している。siRNAを用いてLynまたはFynのいずれかの発現を抑制した。Lynは、αVβ3リガンドであるフィブロネクチン存在下で、PDGFに対する前駆細胞の増殖応答を増強するために必要であり、Fynは、α6β1リガンドであるラミニン2存在下で、PDGFまたはニューレグリンに対する新成オリゴデンドロサイトの生存応答を増強するために必要であった。また、Fynは、ニューレグリンにより活性化される生存シグナル伝達経路において、ラミニンが、ホスホイノシチド3-キナーゼ(PI3K)生存シグナルから、マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)シグナルへの切り替えを促進するためにも必要であった。さらに、ラミニンで培養した細胞の成長因子除去により引き起こされる分化もFynに依存的であり、Lyn欠損細胞では分化への影響は見られなかった。共免疫沈降法により、Fynはα6β1インテグリンと複合体を形成し、LynはPDGFRおよびαVβ3とともに免疫沈降することが示された。Lynの活性化(触媒性チロシンのリン酸化に基づく)は、フィブロネクチンで増殖した前駆細胞において亢進されたのに対し、Fynの活性化は、検討した基質のいずれでも観察された。一方、ラミニン2で増殖した分化オリゴデンドロサイトでは、Srcファミリーのキナーゼを阻害するCskキナーゼの量が減少し、Fyn阻害性のリン酸化が減少した。著者らは、増殖前駆細胞ではαVβ3インテグリンがLynを活性化するのに対し、FynはCskリン酸化により不活性に保たれ、その後、軸索との接触およびα6β1インテグリンの結合が起きるとFynの阻害は緩和され、MAPK依存性の生存シグナル伝達および分化を引き起こすというモデルを提示している。

H. Colognato, S. Ramachandrappa, M. Olsen, C. ffrench-Constant, Integrins direct Src family kinases to regulate distinct phases of oligodendrocyte development. J. Cell Biol. 167, 365-375 (2004). [Abstract] [Full Text]

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

バックナンバー一覧へ