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細胞小器官のシグナル伝達 ミトコンドリアからERへのNOカルシウムシグナル

ORGANELLAR SIGNALING:
NO Calcium Signals from the Mitochondria to the ER

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2004, Issue 258, pp. tw402, 9 November 2004.
[DOI: 10.1126/stke.2582004tw402]

要約 : Xuらは、制御されたプロモーターの調節下で、誘導性一酸化窒素合成酵素(iNOS)を発現するヒト細胞株を用いて、チトクロームc酸化酵素に対して酸素と競合する一酸化窒素(NO)によるミトコンドリア呼吸の阻害作用を調べた。NOは、可溶性グアニル酸キナーゼ活性とは独立して作用するが、小胞体(ER)に常在するシャペロンタンパク質であり、その発現がERストレス応答の一環として増強されるグルコース制御性タンパク質78(Grp78)の発現を亢進させた。著者らは、ウエスタン分析法を用いて、Grp78発現の制御に関与するとされている可溶性の転写因子p50 ATF6の増加をNOが誘導することを示した。ATF6は、調節性膜内タンパク質分解が関与するカルシウム依存性のプロセスを介して生成される。NOに依存したp50 ATF6の産生およびGrp78の発現の亢進は、細胞外カルシウムの不在下でカルシウムイオノフォアに曝露することにより細胞内カルシウムを欠乏させた細胞において抑制された。NOは、ERのカルシウムATPase阻害剤のタプシガルジンにより誘導される細胞毒性を防御し、この防御(ならびにGrp78 mRNAの増加)は、タンパク質分解によるp50 ATF6の生成に関与する2つのセリンプロテアーゼをsiRNAでサイレンシングすることにより抑制された。細胞内カルシウムキレート剤およびシクロスポリンA(ミトコンドリアのカルシウムシグナル伝達を阻害する)は、ともにNOに依存したATF6切断を減少させ、NOに依存したGrp78の増加およびタプシガルジン細胞毒性の防御を抑制した。以上より、著者らは、NOに依存したミトコンドリア呼吸の阻害は、ミトコンドリアとERの間のカルシウムシグナル伝達に影響を与えることにより、p50 ATF6の産生や、さらにはERストレス応答に関与する遺伝子の産生を亢進させるのではないかと述べている。

W. Xu, L. Liu, I. G. Charles, S. Moncada, Nitric oxide induces coupling of mitochondrial signalling with the endoplasmic reticulum stress response. Nat. Cell Biol. 6, 1129-1134 (2004). [Online Journal]

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