依存症 ERKのDARPP側

ADDICTION:
A DARPP Side to ERK

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2005, Issue 267, pp. tw23, 18 January 2005.
[DOI: 10.1126/stke.2672005tw23]

要約 : 薬物依存症は、学習の一形態と考えられる神経機能の変化と関連する。多くの乱用薬物は、側坐核におけるドーパミン作動性神経伝達を亢進させ、それにより、グルタミン酸作動性皮質線条体ニューロンの可塑性に影響を及ぼすと考えられている(ドーパミン作動性とグルタミン酸作動性入力の両方を受け取るニューロンへの影響が示唆される)。Valjentらは、線条体ニューロンにおいて細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK、シナプス可塑性に関連するドーパミン活性およびグルタミン酸活性の標的)の活性化を引き起こす薬物乱用に応答して,ドーパミン作動性シグナルおよびグルタミン酸作動性シグナルの収束する効果を解明した。d-アンフェタミンの注射により、背側線条体および側坐核のマウスドーパミンD1受容体(D1R)を持つニューロンの一部において、ERKのリン酸化が亢進した。また、d-アンフェタミンは、D1Rの標的である相対分子量32,000のドーパミン・cAMP調節性リン酸化タンパク質(DARPP-32)およびグルタミン酸受容体1サブユニット(GluR1)のリン酸化も亢進させた。d-アンフェタミンによるERKおよびGluR1のリン酸化は、D1Rの遮断やノックアウトにより阻害されたが、グルタミン酸作動性NメチルD-アスパラギン酸受容体を薬理学的に遮断しても、ERKのリン酸化は阻害されたものの、GluR1やDARPP-32のリン酸化は阻害されなかった。DARPP-32をノックアウトしたところ、d-アンフェタミンあるいは他の乱用薬物による線条体ERKのリン酸化が抑制された。さらに、タンパク質脱リン酸化酵素-1の阻害に関与するDARPP-32スレオニン残基(Thr-34)の変異は、コカインまたはd-アンフェタミンによる線条体ERKのリン酸化およびERKの基質であるElk-1のリン酸化を阻害したが、前頭前野におけるERKの活性化には影響しなかった。また、DARPP-32のノックアウトやThr-34の変異、ERKシグナル伝達経路の薬理学的遮断も、コカインに対する行動感作を阻害した。DARPP-32は、ERKのリン酸化を促進するとともに、ERKの脱リン酸化を阻害した。GouldとManjiは、Commentaryで本研究の背景について説明し、その重要性を論じている。

E. Valjent, V. Pascoli, P. Svenningsson, S. Paul, H. Enslen, J.-C. Corvol, A. Stipanovich, J. Caboche, P. J. Lombroso, A. C. Nairn, P. Greengard, D. Herve, J.-A. Girault, Regulation of a protein phosphatase cascade allows convergent dopamine and glutamate signals to activate ERK in the striatum. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 102, 491-496 (2005). [Abstract] [Full Text]
T. D. Gould, H. K. Manji, DARPP-32: A molecular switch at the nexus of reward pathway plasticity. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 102, 253-254 (2005). [Full Text]

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