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細胞の生存 化学療法に対する感受性のRNAiスクリーニング

CELL SURVIVAL:
RNAi Screen for Sensitivity to Chemotherapeutics

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2005, Issue 287, pp. tw211, 7 June 2005.
[DOI: 10.1126/stke.2872005tw211]

要約 : 不適当な細胞死や細胞の生存は、神経変性疾患(過剰な細胞死)や癌(過剰な細胞の生存)を始めとするさまざまな疾患を引き起こすことがある。MacKeiganらは、細胞の生存に関与するキナーゼおよびホスファターゼを同定するため、培養ヒト株化細胞にトランスフェクトする低分子干渉RNA(siRNA)を用いて、大規模RNA干渉(RNAi)スクリーニングを行った。著者らは、タンパク質をノックダウンしたときのアポトーシス性細胞死マーカーの増加に基づいて、73種類のキナーゼ(HeLa細胞のキナーゼの11%)および72種類のホスファターゼ(HeLa細胞のホスファターゼの32%)が細胞の生存に積極的に寄与することを同定した。また、ホスファターゼsiRNAライブラリーを用いて、細胞死を減弱させるホスファターゼをスクリーニングした。HeLa細胞にホスファターゼsiRNAをトランスフェクトした後にアポトーシス誘導剤(シスプラチン、タキソール、エトポシド)に曝露することにより、ノックダウンするとアポトーシスに対する抵抗性を獲得する12種類のホスファターゼが同定された。また、RNAiスクリーニングを用いて、ノックダウンするとアポトーシス誘導剤に対する感受性が増加するキナーゼも同定した。この手法を用いることで、化学療法剤をどのように組み合わせれば最も有効であるか予測することができる。著者らは、タキソールをSGK(血清・糖質コルチコイド制御キナーゼ)のsiRNA、チロシンキナーゼFERのsiRNA、CDK8(サイクリン依存性キナーゼ8)のsiRNA、mTORのsiRNAのいずれかと共に用いると、siRNA単独や薬剤単独の場合に比べて、いずれも細胞死が増加することを示した。この種のスクリーニング法は、癌に対する新しい併用療法につながる可能性があり、異なる細胞生存シグナル伝達経路を有する細胞株や癌に適用できることから、癌に対する化学療法のテーラーメードが可能になる。たとえば、著者らは、生存キナーゼのノックダウンに対する感受性がHeLa細胞よりも低い乳癌細胞株BT474において、アポトーシス誘導剤に対する感作の試験も行った。実際、タキソールは、FER、JIK(JNK抑制キナーゼ、Ste20様キナーゼとしても知られる)またはPLK2(Polo様キナーゼ2)のsiRNAとともに、相乗的に細胞死を促進した。以上より、この種の包括的ゲノムスクリーニング法は、細胞死を制御するための新規の標的を同定するだけでなく、既存の薬剤を用いた新規の併用化学療法を探し出す上でも役立つ可能性がある。

J. P. MacKeigan, L. O. Murphy, J. Blenis, Sensitized RNAi screen of human kinases and phosphatases identifies new regulators of apoptosis and chemoresistance. Nat. Cell Biol. 7, 591-600 (2005). [PubMed]

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