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アポトーシス NO、死のシグナル

APOPTOSIS:
NO Deadly Signal

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2005, Issue 292, pp. tw249, 12 July 2005.
[DOI: 10.1126/stke.2922005tw249]

要約 : おとなしい性格のクラーク・ケント(スーパーマン)を連想させるかのように、解糖系酵素であるグリセルアルデヒド3-リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)は、強力で致命的な作用のある分身を持つ。核に移行するとGAPDHは転写制御と関連すると考えられていたが、Haraらはこの酵素をアポトーシスの制御に関連づける結果を示している。GAPDHと相互作用するタンパク質について、酵母ツーハイブリッド法によるスクリーニングを行ったところ、E3ユビキチンリガーゼであるSiah1が見つかった。著者らは、トランスフェクトした細胞においてこれらのタンパク質が相互作用しGAPDHの核局在が増加すること、さらにそれにはSiah1の核局在化シグナルを必要とすることを見いだした。著者らは、スタウロスポリンに応答してアポトーシスを引き起こしたヒト胚腎細胞において、GAPDHの修飾を質量分析法により検出し、さらにin vitroにおいて、S-ニトロシル化によるGAPDHの修飾(細胞内で一酸化窒素の生成が増加した結果であることが多い)がSiah1との会合を増強することを示した。こうした現象は、アポトーシスの制御において重要なようである。リポ多糖類に応答してアポトーシスを誘導するマクロファージ細胞株において、GAPDHはS-ニトロシル化されて内在性のGAPDHと会合し、この複合体は核へと移行した。こうした作用はいずれも、一酸化窒素生成酵素であるiNOS(誘導型一酸化窒素合成酵素)の阻害剤により阻害された。低分子干渉RNA(siRNA)を用いてGAPDHを欠乏させたところ、アポトーシスと関連するマーカーであるリン酸化ヒストンH2Bの生成が阻害された。グルタミン酸受容体の活性化に応答してアポトーシスが誘導される小脳顆粒ニューロンにおいても、同様の作用がみられた。Siah1のGAPDHへの結合の増加は、ニューロン性NOS(nNOS)ノックアウトマウス由来の細胞では阻害され、siRNAを用いて野生型細胞のGAPDHまたはSiah1のいずれかを欠乏させたところ、アポトーシスが阻害された。核Siah1がどのようにしてアポトーシスを促進するのか正確には分かっていない。しかし、その作用にはRINGフィンガードメインが必要なようであることから、Siah1を介するユビキチン化やその結果として起こる核タンパク質の分解が考えられるメカニズムのひとつである。一酸化窒素を介する代謝酵素の修飾は、エネルギー欠乏を介して細胞死に寄与することが示されている。Haraらは、この過程がゆっくりとしたプロセスで壊死との関連が強いのに対して、ごくわずかな量の細胞質GAPDHの移行を反映する核での作用は速く、解糖系への効果とは独立であるようだと述べている。

M. R. Hara, N. Agrawal, S. F. Kim, M. B. Cascio, M. Fujimuro, Y. Ozeki, M. Takahashi, J. H. Cheah, S. K. Tankou, L. D. Hester, C. D. Ferris, S. D. Hayward, S. H. Snyder, A. Sawa, S-nitrosylated GAPDH initiates apoptotic cell death by nuclear translocation following Siah1 binding. Nat. Cell Biol. 7, 665-674 (2005). [PubMed]

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