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微生物学 性と禁欲の細菌フェロモン

MICROBIOLOGY:
Bacterial Pheromone for Sex and Abstinence

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2005, Issue 308, pp. tw381, 1 November 2005.
[DOI: 10.1126/stke.3082005tw381]

要約 : 細菌は接合と呼ばれる過程を介してDNAを伝達でき、これらの染色体外プラスミドDNAの伝達は病原性や抗生物質耐性に寄与する。Chandlerらは、哺乳類の病原体である腸球菌(Enterococcus faecalis)において、ドナー細菌を刺激してプラスミドを含まないレシピエントとの接合を開始させるのと同じフェロモンがドナー細菌によっても産生され、レシピエントが産生するフェロモンに対するドナーの感受性を調節することを報告している。細菌の染色体がフェロモン(cCF10)をコードするので、ドナーとレシピエントは両方ともにこの分子を産生できる。他のドナー細胞との接合を阻止するために、ドナー細胞は内因性に産生されたフェロモンに対する応答を抑制するための2つのメカニズムを有する。ドナー細胞のプラスミドには、接合を担う遺伝子および接合の阻害を担う遺伝子をコードするprgQオペロンが含まれる。接合阻害物質のひとつは、分泌されたcCF10と結合して捕捉する阻害性の分泌タンパク質iCF10で、もうひとつは遊離されたcCF10を分解するあるいはcCF10に結合する膜タンパク質PrgYである。機能的なcCF10を欠損させた変異菌株を用いて、Chandlerらはドナー細胞により産生されたcCF10がiCF10の産生を促進することを示している。ヒト血漿やin vivoで増殖したドナー細胞は、プラスミドにコードされている、細菌の細胞浸潤および病原性に寄与する凝集因子Asc10を産生する。ところが、機能的なcCF10を産生しない変異細菌は、血漿に曝露しても凝集しなかった。iCF10アフィニティークロマトグラフィーにより、iCF10と結合し、それによりiCF10とcCF10とのバランスを変化させ、凝集因子Asc10をコードする遺伝子を含む接合遺伝子の自己誘導を可能にするタンパク質として、アルブミンが同定された。ドナー細菌は、自己産生したcCF10を用いて、cCF10からiCF10への自己分泌シグナル伝達経路を介して、レシピエントが産生するcCF10に対する感受性を調節する。自己産生されたcCF10だけが存在する場合、大部分は不活化され、iCF10の産生は活性化されない。iCF10の含有量を減少させるか、レシピエント細胞によりcCF10を大量に分泌させると、iCF10のcCF10に対する比率が減少して接合が開始する。

J. R. Chandler, J. Hirt, G. M. Dunny, A paracrine peptide sex pheromone also acts as an autocrine signal to induce plasmid transfer and virulence factor expression in vivo. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 102, 15617-15622 (2005). [Abstract] [Full Text]

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