• ホーム
  • 細胞周期エネルギー枯渇時の複製を停止する

細胞周期エネルギー枯渇時の複製を停止する

CELL CYCLE: Stopping Reproduction During Periods of Energy Deprivation

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2005, Issue 314, pp. tw441, 13 December 2005.
[DOI: 10.1126/stke.3142005tw441]

要約 : Mandalらは、有糸分裂組換え法を用いて、3齢複眼原基発生の2次分裂波の際に分裂するものに由来する細胞の喪失に関連するショウジョウバエ(Drosophila)の眼の表現型を発生させる変異を同定した。BrdU取り込みの解析により、変異細胞は1回目の細胞分裂の際には正常に増殖するが、最終的にはG1期に停止することが明らかになった。研究者らがtenuredと名づけたこの変異は、チトクロムcオキシダーゼのサブユニットVa(CoVa)をコードする遺伝子の欠失に位置づけられ、完全欠損型の対立遺伝子を生じさせた。他のミトコンドリア遺伝子の体細胞変異体でも、同様の表現型が得られた。細胞周期の進行の遮断は、特異的なようであった。tenured変異細胞は分化し、適切な形態変化を引き起こし、アポトーシスの亢進は起こらなかった。サイクリンEの含有量(ただし、サイクリンE転写物の発現ではない)は、tenured変異細胞において減少していたのに対し、サイクリンAおよびBの含有量は正常であった。ショウジョウバエS2細胞をCoVa に対するdsRNAで処理したところ、細胞内のATPが野生型細胞の約43%にまでゆっくりと減少し、この減少に並行して細胞増殖が減弱した。ATPの喪失は、アデノシン一リン酸(AMP)活性化プロテインキナーゼ(AMPK)の活性化(リン酸化)の上昇を伴い、in vivoにおける変異解析により、AMPKはtenuredの下流で作用することが明らかになった。dsRNAで処理したS2細胞およびin vivoでの二重変異体をさらに解析したところ、p53はAMPKの下流で作用し、サイクリンEの含有量およびG1期からS期への移行を調節することが明らかになった。以上より、著者らは、ミトコンドリアによるATP産生は特異的なシグナル伝達経路を介して細胞周期の進行を調節するとの結論に達した。

S. Mandal, P. Guptan, E. Owusu-Ansah, U. Banerjee, Mitochondrial regulation of cell cycle progression during development as revealed by the tenured mutation in Drosophila. Dev. Cell 9, 843-854 (2005). [PubMed]

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

バックナンバー一覧へ