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発生神経生物学 Cdk阻害剤の多くの役割

DEVELOPMENTAL NEUROBIOLOGY:Many Hats for Cdk Inhibitor

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2006, Issue 317, pp. tw468, 10 January 2006.
[DOI: 10.1126/stke.3172006tw468]

要約 : 哺乳動物の脳の発生における細胞遊走の制御を解析することにより、生物系が組織化される効率を示す顕著な例、ならびに多機能タンパク質が発生の生物学的プロセスをどのように協調させるのかが明らかになってきた。サイクリン依存性キナーゼ(CDK)は、細胞分裂周期の調節因子として最もよく知られているが、分裂終了後のニューロンは、ニューロン遊走の制御に関与すると考えられる関連タンパク質Cdk5を発現する。Cdkの活性は、p27kip1タンパク質のようなCDK阻害因子により調節される。このタンパク質は、分裂期のCdkを阻害し、細胞が細胞周期から離脱することを可能にする。p27は細胞遊走の制御にも関与すると考えられており、Cdk5によるリン酸化が可能な部位があることから、Kawauchiらは、大脳皮質のニューロン発生の制御におけるこれらのタンパク質の相互作用を探った。分裂期のサイクリンは、分解を促進することでp27の作用に対抗するが、Kawauchiらは、Cdk5によるp27のリン酸化がタンパク質の安定化を促進することを示す証拠を提供している。培養皮質ニューロンを短鎖ヘアピンRNA(short hairpin RNAs)(shRNA)で処理してCdk5の存在量を減少させたところ、p27のリン酸化およびタンパク量がいずれも減少した。shRNAのエレクトロポレーションにより子宮内で胚におけるp27の発現を阻害したところ、皮質ニューロンの正常な遊走が妨げられたことから、p27タンパク質は、遊走の制御において重要な役割を果たすようである。p27のこの作用は、アクチン骨格の制御により部分的に仲介されるようである。p27の欠乏は、発生中の脳細胞におけるF(線維状)アクチンの形成を阻害し、アクチン結合タンパク質であるコフィリンのリン酸化は、p27の欠乏またはCdk5を薬理学的に阻害した後に変化した。著者らは、p27がまず分裂期のCdkを阻害して、増殖ニューロンを細胞周期から離脱させるために機能すると提案している。それが終わると、次にp27はCdk5と会合して細胞骨格の再編成および皮質ニューロンの遊走を促進する。

T. Kawauchi, K. Chihama, Y.-i. Nabeshima, M. Hoshino, Cdk5 phosphorylates and stabilizes p27kip1 contributing to actin organization and cortical neuronal migration. Nat. Cell Biol. 8, 17-26 (2006). [PubMed]

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