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高血圧 基質からのメッセージは血圧を上昇させるか?

HYPERTENSION:
Does a Message from the Matrix Raise Your Blood Pressure?

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2006, Issue 326, pp. tw91, 14 March 2006.
[DOI: 10.1126/stke.3262006tw91]

要約 : 高血圧の病因(心疾患や腎疾患、脳卒中の危険因子)は、複雑でほとんどわかっていない(Raman and Cobb参照)。Zacchignaらは、心血管系で発現する分泌性の細胞外マトリックスタンパク質であるエラスチンミクロフィブリル界面局在タンパク質1(エミリン1)を欠損するマウスは、血管径が減少し末梢抵抗が上昇することと併せて、血圧も上昇することを突き止めた。増殖因子シグナル伝達の調節に関与するいくつかのタンパク質と同様に、エミリン1はシステインリッチドメインを持つ。このことから、著者らはエミリン1と血管発生および病態生理において重要な役割を担うトランスフォーミング増殖因子‐β(TGF-β)との関係を調べた。アフリカツメガエル(Xenopus)胚および哺乳動物培養細胞系を用いた実験により、エミリン1はシステインリッチEMIドメインを介して作用し、TGF-βのシグナル伝達を阻害することが示された。エミリン1は、受容体活性化の上流で作用し、成熟TGF-β1に応答したリガンド‐受容体結合やシグナル伝達を阻害しなかった。それどころか、エミリン1はプロTGF-β1に結合し、そのタンパク質分解プロセシングおよび生物学的に活性なTGF-β1の産生を抑制した。「刺激」細胞(TGF-βを産生)と「応答」細胞(TGF-βレポーターを発現)との混合系におけるエミリン1の機能獲得・喪失実験、ならびに非分泌性のエミリン1を用いた実験により、エミリン1は細胞外で作用することが示された。TGF-βのシグナル伝達(リン酸化Smad2の核染色およびTGF-βレポーターの発現)は、エミリン1を欠損するマウスの大動脈壁において増強され、エミリン1ノックアウトマウスにおいて1つのTGF-β1対立遺伝子を不活性化したところ、正常な血管径および血圧が回復した。以上より、著者らは、エミリン1はTGF-βのプロセシング、ひいては生物学的に活性型のTGF-βの利用性を制御することにより、血圧を調節する作用を持つという結論に達した。

L. Zacchigna, C. Vecchione, A. Notte, M. Cordenonsi, S. Dupont, S. Maretto, G. Cifelli, A. Ferrari, A. Maffei, C. Fabbro, P. Braghetta, G. Marino, G. Selvetella, A. Aretini, C. Colonnese, U. Bettarini, G. Russo, S. Soligo, M. Adorno, P. Bonaldo, D. Volpin, S. Piccolo, G. Lembo, G. M. Bressan, Emilin1 links TGF-β maturation to blood pressure homeostasis. Cell 124, 929-942 (2006). [Online Journal]

M. Raman, M. H. Cobb, TGF-s regulation by Emilin1: New links in the etiology of hypertension. Cell 124, 893-895 (2006). [Online Journal]

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