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転写 Mg2+のオン/オフスイッチ

TRANSCRIPTION:
Mg2+ On-Off Switch

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2006, Issue 330, pp. tw118, 11 April 2006.
[DOI: 10.1126/stke.3302006tw118]

要約 : Mg2+は普遍的に存在するする二価カチオンで、多くの酵素の活性に必要であり、RNA構造や膜を安定化する。その重要性により、生物はMg2+の細胞内濃度([Mg2+]i)を制御するためのメカニズムを有する。サルモネラ(Salmonella enterica)の一種のネズミチフス菌の場合には、ペリプラズムのMg2+濃度の低下はPhoQタンパク質により感知される。このタンパク質は転写因子PhoPのリン酸化を引き起こすことにより、Mg2+トランスポーターをコードする遺伝子mtgAおよびmtgBの発現を促進する。ところが、PhoP/PhoQシステムを欠損する株でも、mtgAの発現は低い[Mg2+]iによって促進される。Cromieらは、Mg2+mtgA転写産物の5’非翻訳領域(5’-UTR)の構造変化を引き起こすことを示している。この際に、Mg2+は濃度が高い場合に転写伸長を阻害し、濃度が低い場合にはコード領域を通した転写を可能にする。定量RT-PCR(逆転写-ポリメラーゼ連鎖反応)実験により、著者らはコード領域が検出されるよりも高い[Mg2+]において5’-UTRが検出可能であることを示した。5’-UTRの100塩基対を無関係な配列で置換したところ、PhoPが恒常的に活性である株においてmtgAの恒常的な発現がみられた。mtgAの5’-UTRをLacZレポーターに付け替えたところ、低い[Mg2+]においてβ-ガラクトシダーゼ活性の促進が起こった。二次構造のモデリングにより、高い[Mg2+]の条件のもとでは二つのループ構造(ステムループAおよびB)が形成され、低い[Mg2+]の条件のもとでは単一のループ構造(ステムループC)が形成されることが示唆された。これらの構造は、RNaseおよび化学修飾実験により[Mg2+]に依存してヌクレオチド塩基の感受性が異なることから支持された。さらに、LacZの前に配置したmtgAの5’-UTRの様々な位置にlacプロモータ誘導体を挿入して特定のステムループ構造を破壊したところ、ステムループCの形成が阻害されるとすべての発現が阻害され、ステムループAまたは3つすべてのステムループの形成が阻害されると発現は[Mg2+]に依存しないことが明らかになった。[Mg2+]が高い場合にはステムループAおよびBが存在し(転写が阻害される)、[Mg2+]が低い場合にはステムループCが存在する(転写が進む)ように、ステムループAがMg2+センサーを形成するというモデルは、特定のステムループを破壊する5’-UTRの点変異実験でも支持された。提唱されたこれらの構造は、他の6種類のグラム陰性細菌由来のmtgA の5’-UTRについても予想されていることから、このMg2+スイッチがこれらのMg2+トランスポーターの量的調節のための共通のメカニズムではないかと考えられる。

M. J. Cromie, Y. Shi, T. Latifi, E. A. Groisman, An RNA sensor for intracellular Mg2+. Cell 125, 71-84 (2006). [Online Journal]

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