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カルシウム IP3受容体パートナーの2つの機能

CALCIUM:
Two Functions for IP3 Receptor Partner

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2006, Issue 341, pp. tw211, 27 June 2006.
[DOI: 10.1126/stke.3412006tw211]

要約 : 細胞表面受容体の刺激に応答して生成するセカンドメッセンジャーのイノシトール1,4,5-トリスリン酸(IP3)は、IP3受容体(IP3Rs、内部カルシウム放出チャネル)に結合して活性化し、カルシウムを細胞内貯蔵部位から放出させる。リン酸化IRBIT(イノシトール1,4,5-トリスリン酸とともに放出されるIP3R結合タンパク質)は、IP3RのIP3結合領域に結合し、IP3により置換される。IRBITを最初に同定したAndoらは、in vitro結合アッセイを用いて、チャネルドメインを欠損するIP3Rを含む融合タンパク質からIRBITがIP3を置換することを示した。スキャッチャード解析によりIRBITがIP3RのIP3に対する親和性を低下させる競合的阻害剤として機能することが示され、変異解析によりIP3RがIP3に結合するのに必要なアミノ酸残基の多くがIRBITへの結合にも関与することが示された。アルカリホスファターゼで処理したIRBITと、IP3Rに対する結合が野生型IRBITよりも非効率的な変異体(S68A、セリン68をアラニンで置換)は、いずれもリン酸化が低下しており、IP3Rに対するIP3の結合を阻害できなかった。IRBITは、小脳ミクロソームにおけるIP3の結合およびIP3依存性のカルシウム放出も阻害した。siRNAを用いてIRBITを枯渇させたHeLa細胞のカルシウムイメージングにより、野生型細胞と比べてIP3産生アゴニストによる刺激に応答したカルシウム放出の増強が明らかになった。S68A(内在性IRBITに結合し、IP3Rに対する親和性が野生型ホモ多量体よりも弱いヘテロ多量体を形成する)の過剰発現も、IP3依存性放出を増強した。これらのことから、IRBITはIP3結合を阻害することによりカルシウム放出を阻害する、リン酸化により調節される「偽リガンド」として機能するのではないかと著者らは提案している。
2つ目の論文では、Mikoshiba研究室の別のグループが、IP3がIP3Rに結合する際に置換されたIRBITが他のパートナーにシグナルを伝達する役割を担うのではないかという考えに基づいて、IRBITの2つ目の機能を提案している。このことから、Shirakabeらは、マウス小脳の抽出物中のIRBITと相互作用するタンパク質を探索した。膜画分から得られた顕著な相互作用タンパク質は、細胞膜を横切ってHCO3-イオンおよびNa+イオンを輸送するNa+/HCO3-共役輸送体のNBC1であると同定された。相互免疫沈降実験により、内在性タンパク質の相互作用が確認された。IP3Rとの結合と同様に、IRBITのNBC1に対する結合もIRBITのリン酸化に依存していた。この相互作用の機能的帰結がアフリカツメガエル(Xenopus)卵母細胞系を用いて検討された。電気生理学的測定により、NBC1とともにIRBITを発現させることがトランスポーターの完全な活性にとって必要であることが示された。IRBITは、膵臓に存在するpNBC1と呼ばれるNBC1スプライシングバリアントとのみ相互作用し、膵管細胞におけるHCO3-の輸送を促進すると考えられている。これらのことから、少なくとも膵臓では、IRBITのIP3Rからの解離を引き起こす生理学的濃度のIP3は、IP3Rチャネルを介したカルシウムの放出を促進できるだけでなく、酸塩基バランスを調節するIRBIT仲介シグナルを起動するのではないかと著者らは提案している。

H. Ando, A. Mizutani, H. Kiefer, D. Tsuzurugi, T. Michikawa, K. Mikoshiba, IRBIT suppresses IP3 receptor activity by competing with IP3 for the common binding site on the IP3 receptor. Mol. Cell 22, 795-806 (2006). [Online Journal]

K. Shirakabe, G. Priori, H. Yamada, H. Ando, S. Horita, T. Fujita, I. Fujimoto, A. Mizutani, G. Seki, K. Mikoshiba, IRBIT, an inositol 1,4,5-trisphosphate receptor-binding protein, specifically binds to and activates pancreas-type Na+/HCO3- cotransporter 1 (pNBC1). Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 103, 9542-9547 (2006). [Abstract] [Full Text]

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