遺伝子発現を活性化するRNA

RNA Activating Gene Expression

Editor's Choice

Sci. STKE, 21 November 2006 Vol. 2006, Issue 362, p. tw392
[DOI: 10.1126/stke.3622006tw392]

Elizabeth M. Adler

Science's STKE, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : 低分子量非コード二本鎖RNA(dsRNA)は、RNA干渉(RNAi)に関与することにより、遺伝子発現のサイレンシングに関与する。Liらは、E-カドヘリンのプロモーター領域を標的とする21-ヌクレオチドdsRNAをヒト前立腺癌細胞株にトランスフェクションし、E-カドヘリンmRNAとタンパク質の含有量の増加を観察した。48時間以内に生じ、1nMという低濃度のdsDNAでも見られたE-カドヘリンmRNA含有量の増加は数日間持続し、プロモーター上の標的部位に依存するようであった。また、同様の標的遺伝子発現の上昇が、血管内皮増殖因子とp21WAF1/CIP1をコードする遺伝子のプロモーターを標的とするdsRNAをトランスフェクションしたさまざまなヒト細胞株において観察された。E-カドヘリンの発現を促進する21-ヌクレオチドdsRNAの削り込みと伸張実験により、16-ヌクレオチドdsRNAと26-ヌクレオチドdsRNAはいずれも遺伝子発現の促進効果がないことが示唆された。さらに、E-カドヘリンとp21を標的とするdsRNAの変異解析により、アンチセンス鎖の5’領域がdsRNA誘導遺伝子活性化(RNAa)に不可欠であることが示された。Argonauteタンパク質に対するsiRNAを用いた実験により、Argonaute 2(RNAiに必要である)もRNAaに必要であることが示された。クロマチン免疫沈降解析により、RNAaがdsRNA標的部位におけるヒストンH3のリジン-9の脱メチル化と関連することが示された。しかし、亜硫酸水素処理によるゲノム塩基配列決定により、DNAメチル化状態の変化は関与しないことが示された。以上より、低分子非コードRNAは、標的遺伝子の発現を阻害するだけでなく、活性化する役割も担うようである。

L. C. Li, S. T. Okino, H. Zhao, D. Pookot, R. F. Place, S. Urakami, H. Enokida, R. Dahiya, Small dsRNAs induce transcriptional activation in human cells. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 103, 17337-17342 (2006). [Abstract] [Full Text]

E. M. Adler, Activating Gene Expression. Sci. STKE 2006, tw392 (2006).

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