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老化とDNA損傷応答を関連づけるがん生物学

Cancer Biology Connecting Senescence to DNA Damage Response

Editor's Choice

Sci. STKE, 5 December 2006 Vol. 2006, Issue 364, p. tw405
[DOI: 10.1126/stke.3642006tw405]

Nancy R. Gough

Science's STKE, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : 体内には、がん発症前の病変から完全な腫瘍への進行を防ぐためのさまざまなメカニズムがある。そのうちのひとつは、がん遺伝子誘導型の老化または細胞周期からの離脱である。2つのグループ(BartkovaらとDi Miccoら)は、特定のがん遺伝子がDNA複製ストレスとDNA損傷チェックポイント応答の活性化を誘導すること、このチェックポイント応答の活性化が観察される老化に不可欠であることを示す証拠を今回提示している。Bartkovaらは、さまざまなヒト二倍体細胞において、Mos(マイトジェン活性化プロテインキナーゼ経路の活性化因子)、Cdc6(DNA複製ライセンシング因子)、サイクリンE(細胞周期に関与するタンパク質)により誘導される老化を調べた。いずれの場合にも、細胞はDNA損傷チェックポイントの活性化と老化を示した。ATM(DNA損傷チェックポイント応答に重要なキナーゼ)の活性をsiRNAまたは薬物により阻害すると、老化は妨げられた。DNA標識実験により、がん遺伝子はDNA複製フォークを未成熟な状態で終結させ、このことがDNA損傷応答を誘導する二本鎖切断が生じさせるメカニズムらしいことが示された。Di Miccoらは、DNA損傷チェックポイント応答とRas誘導型の老化を関連づける証拠を提示している。がん遺伝子誘導型の老化を受ける細胞は、DNA損傷チェックポイント応答の活性化を示した。チェックポイントキナーゼ2(CHK2)活性が低下している(ノックアウトまたはRNA干渉による)細胞は、Ras誘導型の形質転換の影響を受けやすく、その後増殖を続けた。Rasは増殖を一過性に誘導し、その結果老化した細胞では一部のDNAが複製されていた。Bartkovaらは、大腸腺腫サンプルにおいて、老化のマーカーとDNA損傷チェックポイントの活性化のマーカーの出現の間に相関があり、がんへの進行がこれら2つのプロセスの低下と相関することを突き止めた。両グループは、腫瘍形成のマウスモデルを観察した。Bartkovaらは、rasで形質転換した腫瘍細胞株をATMの活性を低下させたマウスに注射すると、より大きくより浸潤性の腫瘍が生じることを突き止めた。Di Miccoらは、マウス皮膚におけるRas変異の誘導と関連する化学物質は、細胞増殖とDNA損傷応答の活性化を引き起こすことを示した。がん遺伝子により誘導される増殖は、DNA損傷応答を誘導するDNAストレスを引き起こし得るので、それにより生体は腫瘍への進行を防ぐことができるようである。

J. Bartkova, N. Rezaei, M. Liontos, P. Karakaidos, D. Kletsas, N. Issaeva, L.-V. F. Vassiliou, E. Kolettas, K. Niforou, V. C. Zoumpourlis, M. Takaoka, H. Nakagawa, F. Tort, K. Fugger, F. Johansson, M. Sehested, C. L. Andersen, L. Dyrskjot, T. Orntoft, J. Lukas, C. Kittas, T. Helleday, T. D. Halazonetis, J. Bartek, V. G. Gorgoulis, Oncogene-induced senescence is part of the tumorigenesis barrier imposed by DNA damage checkpoints. Nature 444, 633-637 (2006). [PubMed]
R. Di Micco, M. Fumagalli, A. Cicalese, S. Piccinin, P. Gasparini, C. Luise, C. Schurra, M. Garre, P. G. Nuciforo, A. Bensimon, R. Maestro, P. G. Pelicci, F. d’Adda di Fagagna, Oncogene-induced senescence is a DNA damage response triggered by DNA hyper-replication. Nature 444, 638-642 (2006). [PubMed]

N. R. Gough, Connecting Senescence to DNA Damage Response. Sci. STKE 2006, tw405 (2006).

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