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がん:FOXP3はX連鎖がん抑制因子である

Cancer FOXP3 Is an X-Linked Tumor Suppressor

Editor's Choice

Sci. STKE, 3 July 2007 Vol. 2007, Issue 393, p. tw230
[DOI: 10.1126/stke.3932007tw230]

Elizabeth M. Adler

Science's STKE, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : 多くの乳がんは、ERBB2発癌遺伝子(HER-2またはNeuとしても知られる)の過剰発現に伴って発症する。遺伝子増幅によってERBB2の過剰発現が起こることがあるが、いくつかのヒトのがんでは遺伝子増幅を伴わずにERBB2が過剰発現する。Zuoらは、Foxp3遺伝子が変異したヘテロ接合体の高齢雌マウス(Foxp3sf/+)の大部分ががんを自然発症し、そのうちの約60%が乳がんであることに気づいた。さらに、これらのマウスは、プロゲステロンとともに発がん物質のDMBAで処理すると、乳がん発症の感受性が上昇した。ヘテロ接合体マウスから顕微解剖して摘出した正常乳腺上皮組織と乳がん細胞の解析により、Foxp3の野生型対立遺伝子が前者では発現しているのに対して、後者では発現が抑制され、ErbB2の発現も上昇することが明らかになった。クロマチン免疫沈降解析により、マウス乳がん細胞株(TSA)にトランスフェクションするとErbB2の発現を低下させるFoxp3融合タンパク質がErbB2プロモーターに結合することが示された。また、レポーター活性の変異解析と電気泳動移動度シフト解析との組み合わせにより、Fox3pの結合がErbB2の抑制に必要であることが明らかになった。正常ヒト乳腺上皮細胞においてsiRNAを用いてFOXP3を抑制するとERBB2の発現は上昇したが、ERBB2遺伝子の増幅を伴う乳がん細胞株においてFOXP3の発現を誘導すると、細胞表面のErbB2量は減少した。FOXP3の欠損はヒト乳がん細胞株と乳がん組織で観察され、このような欠損の存在はErbB2量の増大との相関を示した。興味深いことに、Foxp3を乳がん細胞株にトランスフェクションすると、in vitroおよびin vivoでの増殖が低下した。以上より、著者らはFOXP3ERBB2を調節するがん抑制因子であるとの結論に達している。Medema&Burgeringは、X連鎖がん抑制因子に関連するX染色体不活性化の重要性と、制御性T細胞の発生におけるFoxp3の役割がそのがん抑制活性に寄与する可能性について論じている。

T. Zuo, L. Wang, C. Morrison, X. Chang, H. Zhang, W. Li, Y. Liu, Y. Wang, X. Liu, M. W. Y. Chan, J.-Q. Liu, R. Love, C.-g. Liu, V. Godfrey, R. Shen, T. H.-M. Huang, T.
Yang, B. K. Park, C.-Y. Wang, P. Zheng, Y. Liu, FOXP3 is an X-linked breast cancer suppressor gene and an important repressor of the HER-2/ErbB2 oncogene. Cell 129, 1275-1286 (2007). [PubMed]
R. H. Medema, B. M. Th. Burgering, The X factor: Skewing X inactivation towards cancer. Cell 129, 1253-1254 (2007). [PubMed]

E. M. Adler, FOXP3 Is an X-Linked Tumor Suppressor. Sci. STKE 2007, tw230 (2007).

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