• ホーム
  • 構造生物学 形状が変化するケモカイン

構造生物学 
形状が変化するケモカイン

Structural Biology
Shape-Shifting Chemokines

Editor's Choice

Sci. Signal., 8 April 2008
Vol. 1, Issue 14, p. ec122
[DOI: 10.1126/stke.114ec122]

Annalisa VanHook

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : リンフォタクチン(Ltn)はケモカインの中でも変わり者だ。他のケモカインにはすべて2つのジスルフィド架橋があるが、Ltnにはたった1つ。この際立った特徴から、その独特の構造的特性を説明できるだろう。In vitroではLtnは2つの高次構造をとる。低温(10℃)高塩濃度条件ではLtn10が優勢であり、もう1つのLtn40は高温(40℃)低塩濃度での高次構造である。生理的条件下ではこれら2つの構造は平衡状態にある。Tuinstraらは、このような立体構造の可変性の機能的意義について検討した。核磁気共鳴研究により、Ltn10とLtn40は、分子内水素結合のために異なるアミノ酸残基の組み合わせを使用した、独特な構造をしていることが明らかにされた。著者らは、アミノ酸置換により、1つの立体構造、または他方のいずれかの立体構造に固定されるLtn10とLtn40の遺伝子組換え蛋白質を作成した。他のケモカインと同様に、Ltnはその受容体(XCR1)と、ヘパリン等の細胞外基質のグリコサミノグリカンの両方に結合する。しかし、組換えLtn10 は高い親和性でXCR1に結合するがヘパリンには結合しない。一方で組換えLtn40は高い親和性でヘパリンに結合するがXCR1には結合しない。in vitroではいずれの蛋白質も、ヒトT細胞の走化性を刺激するというLtnの活性を再現しなかった。さらに著者らは、LtnはXCR1とヘパリンに同時には結合できないことを明らかにし、Ltnはその受容体に結合して活性化する前に、細胞外基質成分と遊離しなければならないことを示唆した。この研究は、温度などの生理的条件の変化(例えば炎症など)が、蛋白質の2つの立体構造状態の平衡を変え、このことが、従来認識されていなかったシグナル伝達の動態に作用する方法となっている可能性を示唆している。

R. L. Tuinstra, F. C. Peterson, S. Kutlesa, E. S. Elgin, M. A. Kron, B. F. Volkman, Interconversion between two unrelated protein folds in the lymphotactin native state. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 105, 5057-5062 (2008). [Abstract] [Full Text]

A. VanHook, Shape-Shifting Chemokines. Sci. Signal. 1, ec122 (2008)

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る