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薬理学
麻酔は術後疼痛を増強する

PharmacologyAnesthesia Increases Postoperative Pain

Editor's Choice

Sci. Signal., 1 July 2008
Vol. 1, Issue 26, p. ec236
[DOI: 10.1126/scisignal.126ec236]

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : 静脈麻酔薬が投与された患者は往々にして灼熱感を報告し、刺激性吸入麻酔薬は呼吸器を刺激するためその用量が制限される。Mattaらは、刺激性の揮発性麻酔薬であるisofluraneとdesflurane、また静脈麻酔薬であるpropofolとetomidate(これらは有害性全身麻酔薬と総称される)が、末梢侵害性感覚神経の多くに存在する一過性受容器電位チャネルファミリーtransient receptor potential familyのメンバーであるTRPA1チャネルを活性化したことを明らかにしている。一方、非刺激性の揮発性麻酔薬であるhalothaneとsevofluraneは活性化しなかった。電気生理学的実験から、培養細胞にチャネルを強制的に発現させたとき、有害性全身麻酔薬はTRPA1チャネルを活性化するが、TRPV1 やTRPM8チャネルは活性化しないことが明らかにされた。後根神経節由来の培養神経細胞でカルシウム画像を用いた実験を行ったところ、これらの有害性全身麻酔薬はTRPA1を含む侵害受容性神経を活性化することが示された。TRPA1欠損マウスから単離した細胞は、有害性全身麻酔薬に反応しなかった。無細胞のパッチクランプ法でも有毒性全身麻酔薬はチャネルを活性化したことから、これらの薬物はチャネルと直接的に相互作用し、チャネルの調節にセカンドメッセンジャーによるシグナル伝達を必要としないことが示唆された。マウスへのpropofol投与で疼痛反応が誘発されるためにはTRPA1が必要であり、神経刺激物質とisofluraneの併用は、刺激物質単独で認めたものより強い腫脹を誘発した。したがって、これらの中枢神経系抑制剤は外科的麻酔の誘導には重要だが、TRPA1を活性化しない全身麻酔薬を選択することで、術後の疼痛と炎症を最小限にできると考えられる。

J. A. Matta, P. M. Cornett, R. L. Miyares, K. Abe, N. Sahibzada, G. P. Ahern, General anesthetics activate a nociceptive ion channel to enhance pain and inflammation. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 105, 8784-8789 (2008). [Abstract] [Full Text]

N. R. Gough, Anesthesia Increases Postoperative Pain. Sci. Signal. 1, ec236 (2008).

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