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生理学
汗をかかない運動の効果

Physiology
The Benefits of Exercise Without the Sweat

Editor's Choice

Sci. Signal., 12 August 2008
Vol. 1, Issue 32, p. ec284
[DOI: 10.1126/scisignal.132ec284]

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : 骨格筋は、運動に応えて順応性を示す多数の臓器の一つである。骨格筋は転写性のリプログラミングを受け、ミトコンドリアのバイオジェネシスと酸化的リン酸化、脂肪酸酸化および遅筋の収縮タンパク質を増加させる。これらはパフォーマンスと持久力を向上させるのみならず、肥満および代謝性疾患を予防することにもなる。核内受容体であるペルオキシソーム増殖剤応答性受容体g(PPARγ)の活性型をマウス骨格筋で過剰発現させると、筋線維が酸化型に事前にプログラミングされるようであり、トレーニングしていないマウスでの走行持久力を向上させる。成体マウスを運動と組み合わせてPPARγアゴニストのGW1516で処理すると、持久力が向上し、骨格筋がリプログラミングされる。Narkarらは、運動しない場合にはGW1516が持久力を向上させることはなく、運動とGW1516の両方が遅筋の割合の増加、ミトコンドリアバイオジェネシスの亢進、脂肪酸の貯蔵と取込みに関わる遺伝子の転写の亢進に必要であることを明らかにした。活性型PPARγを過剰発現しているトランスジェニックマウスの骨格筋では、アデノシン一リン酸(AMP)活性化プロテインキナーゼ(AMPK)が恒常的に活性化されている。マウスにAICAR(AMPKアゴニスト)を投与すると、トレーニングなしでも持久力が向上する。安静にしているマウスで、AICARによるAMPKの活性化とGW1516によるPPARγの活性化を組み合わせて行うと、独特な(189遺伝子の)転写プロフィールが得られた。しかし、そのうち52の遺伝子は、GW1516によるPPARγの活性化と運動との組み合わせで調節される遺伝子(130遺伝子)の多くと重複していた。野生型またはPPARγ欠損マウスの初代筋細胞培養により、遺伝子発現に対するGW1516とAICARの作用にはPPARγが必須であることが明らかになった。AD293細胞への遺伝子導入の実験から、AMPKのαサブユニットはPPARγと共免疫沈降するが、PPARγをリン酸化しないらしいことが明らかになった。したがって、AMPKはタンパク質間相互作用を介して、あるいはコアクチベーターのリン酸化によって、PPARγ活性を亢進させると考えられる。マウスの骨格筋において、1つの薬剤が運動の作用を真似る能力があるということは、大変興味深い。しかし、これらの結果をヒトに適用できるのかや、AMPKの活性化が運動のもつ健康への効果を媒介するのに重要な他の臓器に対してどのような作用を持つのかを決定する必要がある(Richterら参照)。

V. A. Narkar, M. Downes, R. T. Yu, E. Embler, Y.-X. Wang, E. Banayo, M. M. Mihaylova, M. C. Nelson, Y. Zou, H. Juguilon, H. Kang, R. J. Shaw, R. M. Evans, AMPK and PPARγ agonists are exercise mimetics. Cell 134, 405-415 (2008). [PubMed]
E. A. Richter, B. Kiens, J. F. P. Wojtaszewski, Can exercise mimetics substitute for exercise? Cell Metab. 8, 96-98 (2008). [PubMed]

N. R. Gough, The Benefits of Exercise Without the Sweat. Sci. Signal. 1, ec284 (2008).

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