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非コードRNA 
ビッグ・ブラザーの監視の目

Noncoding
RNABig Brother's a Bully

Editor's Choice

Sci. Signal., 9 September 2008
Vol. 1, Issue 36, p. ec314
[DOI: 10.1126/scisignal.136ec314]

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : ゲノムは、タンパク質を作るために使用されるコード配列と、転写されても翻訳はされずに遺伝子発現を調節する非コード配列の組合わせを含む。そのような非コードRNAにもっとも多くみられるのは、低分子干渉RNA(siRNA)およびマイクロRNA(microRNA)などの低分子制御RNAである。しかし、低分子制御RNAほどの特徴はわかっていないが、比較的長い非コード制御RNAも存在する。HellwigとBassは、線虫(Caenorhabditis elegans)において800ヌクレオチドで構成された転写物を同定し、この転写物の量が飢餓に応答して増加されたことから、「RNA noncoding, starvation up-regulated(飢餓で発現上昇する非コードRNA)」を略してrncs-1と命名した。rncs-1のプロモーター領域に緑色蛍光タンパク質(GFP)を融合させた線虫におけるGFPの発現量は飢餓に応答して同様の増大を示したので、飢餓応答によるrncs-1量の増大は転写の亢進によって仲介されているらしい。胚抽出物中におけるDicerの酵素活性によるrncs-1のin vitro切断試験では、rncs-1はDicerの基質のひとつではないことが明らかになった。これは、おそらくrncs-1の末端にある分枝構造が原因のようである。その代わりに、rncs-1はDicerの標的RNAの切断を阻害し、siRNAのin vitroでの生成量を減少させた。さらに、Dicerにより発現を抑制される遺伝子(標的遺伝子に対して相補的な低分子制御RNAが生成されるため)の発現は、rncs-1欠損型の線虫ではさらに低下した。rncs-1を過剰発現させた線虫では、このようにDicerによる調節をうける遺伝子のmRNAが増大する一方で、これらのmRNAを標的とするsiRNAは減少した。rncs-1欠損型の線虫は飢餓性衰弱または耐性幼虫の表現型を示すことができなかったことは、rncs-1が飢餓に対する応答機構のほんの一部でしかないことを示唆する。その代わりに、in vivoでrncs-1を過剰発現させると、雌雄同体の個体群における雄性の頻度の増加がおこった。哺乳類やハエを含む他の種では、非コード高分子RNAはX染色体の遺伝子量補償に関与していることから、性別の決定にrncs-1が関与している可能性は興味深い。

S. Hellwig, B. L. Bass, A starvation-induced noncoding RNA modulates expression of Dicer-regulated genes. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 105, 12897-12902 (2008). [Abstract] [Full Text]

N. R. Gough, Big Brother's a Bully. Sci. Signal. 1, ec314 (2008).

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