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薬理学
β遮断薬:アンタゴニストでありながらアゴニストでもある

Pharmacology
β-Blockers:Both Antagonist and Agonist

Editor's Choice

Sci. Signal., 30 September 2008
Vol. 1, Issue 39, p. ec336
[DOI: 10.1126/scisignal.139ec336]

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : β遮断薬と呼ばれる薬物群は、高血圧やさまざまな心臓疾患の治療に使用される。これらの薬物の臨床効果は多様である。Kimらはスクリーニングした20種類のβ遮断薬のうちの2種類が、分子標的であるβ1アドレナリン受容体(β1-AR)に対してアンタゴニストとしてもアゴニストとしても作用することを発見した。β1-ARはGタンパク質共役型受容体(GPCR)であり、すべてのβ遮断薬が、同族のGタンパク質へのGPCRによるシグナル伝達を阻害する。しかし、β-ARは、Gタンパク質を介したシグナルを伝達するほかに、βアレスチンとの相互作用を介してもシグナルを伝達することができる。βアレスチンは、GPCRキナーゼ(GRK)によってリン酸化された受容体と相互作用する足場タンパク質である。Kimらは、アルプレノロール(Alp)およびカルベジロール(Car)が、アンタゴニスト活性のほかに、β1-ARを介する上皮増殖因子受容体(EGFR)の活性化および細胞外シグナル制御キナーゼ(ERK)の活性化を促進することを発見した。EGFRの活性化は、β1-ARとタグ標識EGFR(GFP-EGFR)をトランスフェクションした細胞におけるGFP-EGFRの細胞内移行をモニタリングすることによって検出した。EGFRとERKのリン酸化反応もAlpとCarによって促進された。GRKによるリン酸化部位を変異させた型のβ1-ARを発現する細胞は、AlpまたはCarに応答するEGFRの活性化を示さなかった。βアレスチン1とβアレスチン2のいずれか一方、または両方をsiRNAによってノックダウンした場合も、AlpまたはCarによるERKの活性化は遮断された。β1-ARの媒介によるEGFRの活性化は、プロテインチロシンキナーゼSrcと、マトリックスメタロプロテイナーゼ(MMP)の活性化によるEGF放出に関与することが知られている。SrcまたはMMPの活性のいずれかが薬理学的に阻害されると、AlpまたはCarによるEGFRとERKの活性化も阻害された。重要なことに、著者らは、今回のトランスフェクション細胞で得られた発見をマウスでも確認し、AlpまたはCarの注入によって心臓のERKリン酸化が促進されること、およびこの応答はMMPまたはEGFRの活性が薬理学的に阻害されると遮断されることを明らかにした。これら2つの薬物の治療効果は、Gタンパク質シグナル伝達を阻害する一方で、β1-ARシグナル伝達の心臓保護作用と関連がある経路を活性化させるβアレスチン媒介性シグナル伝達を促進するという、二重の活性の結果なのかもしれない。

N. R. Gough, β-Blockers: Both Antagonist and Agonist. Sci. Signal. 1, ec336 (2008).

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