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代謝 
脂肪フィードバック

Metabolism
Fat Feedback

Editor's Choice

Sci. Signal., 3 February 2009
Vol. 2, Issue 56, p. ec34
[DOI: 10.1126/scisignal.256ec34]

L. Bryan Ray

Science, Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : Liuらは、古典的な生化学的精製方法を用いて、ブタ脳抽出物中において、チャイニーズハムスター卵巣細胞に発現させた様々な動物種に由来するヘテロ三量体グアニンヌクレオチド結合タンパク質(Gタンパク質)共役受容体(GPCR)GPR81を活性化することができるリガンドを同定した。GPR81は、脂肪組織に最も豊富に見られる。核磁気共鳴分光解析によって、活性化能を有する画分には高純度のL-乳酸が含まれることが明らかになった。グアノシン三リン酸γSの結合、アデノシン3',5'-一リン酸の蓄積の阻害、または有効濃度の中央値(EC50)5 mMを有する受容体の細胞内移行のアッセイで検出されるように、L-乳酸はGPR81を活性化させた。5 mMのEC50は、GPCRの大部分のリガンドが必要とする濃度よりもはるかに高かった。しかし、著者らは、ヒト血漿中の安静時の乳酸濃度は0.5〜2 mMであり、激しい無酸素運動の後には20 mMにまで上昇することがあると指摘している。L-乳酸は、分化したマウス3T3-L1細胞(脂肪細胞株)およびヒト脂肪細胞の初代培養において脂肪分解を阻害した。GPR81ノックアウトマウスに由来する脂肪細胞では、脂肪分解に対するL-乳酸塩の影響は認められなかったが、これらの細胞における脂肪分解のインスリンおよび他の刺激に対する応答性は維持されていた。著者らは、GRR81は乳酸の受容体であり、代謝制御における乳酸の役割を説明するかもしれないと結論付ける。過度の運動の間に産生される乳酸は脂肪分解を制限する働きがあるかもしれないと提唱されている。遊離脂肪酸からのアデノシン三リン酸の産生は、ピルビン酸からの産生と比較して効率が悪い(必要酸素量の点で)ため、このことは有益になりうる。したがって、遊離脂肪酸の放出を制限することは、解糖(乳酸を産生する)速度がミトコンドリアの呼吸速度を超える場合は妥当であろう。乳酸は、代謝負荷時(例えば、食事後、グルコースが豊富に存在する時)に、脂肪細胞によっても産生される。この場合、L-乳酸は脂肪分解を抑制する自己分泌シグナルとして働く可能性があると著者らは述べている。

C. Liu, J. Wu, J. Zhu, C. Kuei, J. Yu, J. Shelton, S. W. Sutton, X. Li, S. J. Yun, T. Mirzadegan, C. Mazur, F. Kamme, T. W. Lovenberg, Lactate inhibits lipolysis in fat cells through activation of an orphan G-protein-coupled receptor, GPR81. J. Biol. Chem. 284, 2811-2822 (2009). [Abstract] [Full Text]

L. B. Ray, Fat Feedback. Sci. Signal. 2, ec34 (2009).

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