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内在性アンチセンスがp53を増大させる

Molecular Biology
Endogenous Antisense Increases p53

Editor's Choice

Sci. Signal., 3 March 2009
Vol. 2, Issue 60, p. ec79
[DOI: 10.1126/scisignal.260ec79]

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : がん抑制因子であるp53は、DNA損傷に対する細胞応答にとって重要であり、がん細胞において最も高頻度に変異する遺伝子の1つによってコードされている。p53量の調節は複雑であり、転写および転写後の機構が重要な役割を果たしている。Mahmoudiらは、p53の第一エキソンと重複しているアンチセンス転写産物を同定し、これをノックダウンするとp53の転写産物とタンパク質の両方の量が減少することを明らかにした。p53にアンチセンスなRNAをコードするWD40という意味で、彼らはこのアンチセンス転写産物をWrap53と呼ぶとともに、p73遺伝子にも重複するWrap73アンチセンス遺伝子があることを明らかにした。p53の増大にはWrap53タンパク質が不要であることを検証するために、様々な手法が用いられた。例えば、 エキソン1α(代替的な開始領域からの転写産物であり、p53をコードする配列と重複している唯一のWrap53転写産物)を特異的な標的とするサイレンシングRNA(低分子干渉RNA:siRNA)は、Wrap53タンパク質量に影響を及ぼすことなくp53量を低下させた。一方、タンパク質をコードしていない エキソン1αのみの過剰発現は、p53量が増大させた。Wrap53と、それに対応するp53遺伝子の領域は二本鎖を形成すると思われ、2'-ο-メチルオリゴリボヌクレオチドを添加することによってこの二本鎖を抑制するとp53量が減少した。Wrap53も欠乏させた細胞をDNA損傷剤に曝露させると、細胞中のp53の刺激が低下したこと、また エキソン1αを含む切断型Wrap53の過剰発現によってDNA損傷誘導性細胞死が増大したことから、DNA損傷に対する応答において、Wrap53によるp53の調節が重要であることは明白であった。

S. Mahmoudi, S. Henriksson, M. Corcoran, C. Méndez-Vidal, K. G. Wiman, M. Farnebo, Wrap53, a natural p53 antisense transcript required for p53 induction upon DNA damage. Mol. Cell 33, 462-471 (2009). [PubMed]

N. R. Gough, Endogenous Antisense Increases p53. Sci. Signal. 2, ec79 (2009).

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