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自然免疫に不可欠なインテグリン

Immunology
Integrin Integral to Innate Immunity

Editor's Choice

Sci. Signal., 28 July 2009
Vol. 2, Issue 81, p. ec250
[DOI: 10.1126/scisignal.281ec250]

L. Bryan Ray

Science, Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : 自然免疫系は各種受容体を用いて細菌やウイルスの侵入を検出する。ウイルスの侵入は宿主細胞内部でのウイルスDNAやRNAの認識を通じて検出されることが多い。今回、Di Paoloらはマクロファージの細胞表面上のインテグリンがウイルスタンパク質を検出するという別の機構を提唱している。彼らは、炎症性遺伝子の発現がマウスにアデノウイルスを注射して10分以内にマクロファージ中で亢進することを発見した。ノックアウト動物を用いた実験の結果、アデノウイルスに対する免疫応答は炎症性サイトカインであるインターロイキン-1αの産生に依存していた。NLRPインフラマソームはアデノウイルスのdsDNAを認識すると考えられているが、Di PaoloはNLRP-3あるいは別の核酸検出受容体であるToll様受容体9が欠損しているマウスもアデノウイルスによく応答することを示した。この応答の鍵は、特定のウイルスタンパク質中のRGD(アルギニン‐グリシン‐アスパラギン酸)モチーフと細胞表面上のインテグリンの相互作用であると考えられ、この相互作用がウイルスの細胞内移行を促す。インテグリンβ3欠損マウスにはIL-1α mRNAの発現低下が見られ(インテグリンβ1欠損マウスでは見られない)、受容体と相互作用するウイルスタンパク質内のRGDモチーフが変異している変異ウイルスも、マクロファージ中の転写応答を低下させた。著者らは、このような細胞表面上のインテグリンによる迅速なウイルス検出および細胞応答の早期開始は、細胞内のウイルスRNAまたはDNAを検出するよりもさらに有用であると示唆している。Fitzgeraldは、宿主の炎症応答の開始が障壁となり、遺伝子治療におけるアデノウイルスの将来性が妨げられているという点で、今回の結果は特に役に立ちそうであるとコメントしている。

N. C. Di Paolo, E. A. Miao, Y. Iwakura, K. Murali-Krishna, A. Aderem, R. A. Flavell, T. Papayannopoulou, D. M. Shayakhmetov, Virus binding to a plasma membrane receptor triggers interleukin-1α-mediated proinflammatory macrophage response in vivo. Immunity 31, 110-121 (2009).[PubMed]

K. A. Fitzgerald, Integr-ating IL-1α in antiviral host defenses. Immunity 31, 7-9 (2009).[PubMed]

L. B. Ray, Integrin Integral to Innate Immunity. Sci. Signal. 2, ec250 (2009).

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