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疼痛
脂肪が痛みのメッセージを送る

Pain
Fats Deliver a Painful Message

Editor's Choice

Sci. Signal., 10 November 2009
Vol. 2, Issue 96, p. ec357
[DOI: 10.1126/scisignal.296ec357]

Nancy R. Gough

Science Signaling, AAAS, Washington, DC 20005, USA

要約 : 炎症は、通常は無痛の刺激に疼痛を起こさせる(異痛症として知られる現象)。この異痛症の発現には、一過性受容体電位バニロイド1(TRPV1)の関連が示唆されている。TRPV1は侵害的熱、プロトン(酸性下)およびエイコサノイドや内在性カンナビノイドなどの内因性リガンドによって活性化される(OhおよびWood参照)。培養三叉感覚ニューロンの多くはTRPV1チャネルを有するが、Patwardhanらは、脱分極したラット摘出脊髄が、この培養三叉感覚ニューロンを刺激する分子を放出することを示している。この脊髄溶出液に対する応答はTRPV1ノックアウトマウス由来の三叉ニューロンでは認められず、野生型ニューロンにおける応答はTRPV1アンタゴニストによって遮断された。この分子は、同様に炎症時に放出されることで知られているリノレン酸の酸化産物、9-ヒドロキシオクタデカジエン酸(9-HODE)、13-HODE、9-oxoODEおよび12-oxoODE、として単離、同定された。これらの脂質産物のいずれかを三叉ニューロンまたはTRPV1を導入した培養細胞に適用すると刺激が誘発され、それぞれカルシウムシグナルまたは電流が発生する。9-HODEをラット脊髄に注入すると炎症性機械的異痛症(通常は疼痛を伴わない接触による疼痛)が生じたが、これはTRPV1アンタゴニストとの同時注入によって遮断された。炎症性物質をラットの肢に注射した場合も機械的異痛症が発現したが、これは抗体の髄腔内注入により9-HODEおよび13-HODEを中和すると改善した。このように、有害刺激が脊髄TRPV1チャネルを活性化する炎症性脂質産物の放出を促すことで、痛覚過敏が生じると考えられる。

A. M. Patwardhan, P. E. Scotland, A. N. Akopian, K. M. Hargreaves, Activation of TRPV1 in the spinal code by oxidized linoleic acid metabolites contributes to inflammatory hyperalgesia. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 106, 18820-18824 (2009). [Abstract] [Full Text]
U. Oh, J. N. Wood, Fat location defines sensation. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 106, 18435-18436 (2009). [Full Text]

N. R. Gough, Fats Deliver a Painful Message. Sci. Signal. 2, ec357 (2009).

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