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エストロゲン受容体とNF-κBのシグナル伝達の交差点
Crossroads of Estrogen Receptor and NF-κB Signaling
Sci. STKE, Vol. 2005,
Issue 288, pp. pe27, 14 June 2005
[DOI: 10.1126/stke.2882005pe27]
Debajit K. Biswas*, Sindhu Singh, Qian Shi, Arthur B. Pardee, and J. Dirk Iglehar
Department of Cancer Biology, Dana-Farber Cancer Institute, and Department of Surgery, Brigham and Women’s Hospital, Boston, MA 02115, USA.*Corresponding author. E-mail: Debajit_Biswas@dfci.harvard.edu
要約 : 高等生物の細胞恒常性は、細胞の増殖、分化、死のバランスによって維持されている。細胞外シグナルを細胞核の機構へ伝達する2つの重要なシステムは、核因子κB(NF-κB)とエストロゲン受容体(ER)を活性化させるシグナル伝達経路である。これら2つの転写因子は、増殖や細胞死(アポトーシス)などの細胞運命を制御する遺伝子の発現を誘導する。しかし、ERには抗炎症作用がある一方で、活性化NF-κBは細胞の炎症反応を開始させ、持続させる。最近の研究では、ERの非古典的、非ゲノム的な作用、すなわちNF-κB活性化と炎症反応の抑制が解明された。乳癌においては、抗エストロゲン療法によってNF-κBが再活性化され、増殖シグナルが別経路で乳癌細胞へ伝達されてホルモン耐性が生じる可能性がある。したがって、NF-κB活性化を選択的に遮断するERリガンドは、ホルモン耐性のER陽性乳癌に対して有力な特異的治療法となる可能性がある。
D. K. Biswas, S. Singh, Q. Shi, A. B. Pardee, J. D. Iglehart, Crossroads of Estrogen Receptor and NF-κB Signaling. Sci. STKE 2005, pe27 (2005).