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β-カテニン、癌、Gタンパク質:いまやFrizzledだけのものではない
β-Catenin, Cancer, and G Proteins: Not Just for Frizzleds Anymore
Sci. STKE, Vol. 2005,
Issue 292, pp. pe35, 12 July 2005
[DOI: 10.1126/stke.2922005pe35]
Craig C. Malbon*
Department of Pharmacology, School of Medicine, Health Sciences Center, SUNY-Stony Brook, Stony Brook, NY 11794-8651, USA.*Contact information. e-mail, craig@pharm.sunysb.edu
要約 : 脂質代謝産物リゾホスファチジン酸(LPA)は、形態形成、細胞増殖、細胞生存、細胞接着、細胞移動などの重要な一連の反応を媒介する。LPAは、7回膜貫通領域を有する三量体グアニンヌクレオチド結合タンパク質(Gタンパク質)共役型受容体のLPA1、LPA2、およびLPA3(以前のEdg-2、-4、および-7)ファミリーに結合することで、その下流へのシグナル伝達を行なう。疾病の治療に関連して興味がもたれているLPAの作用には、創傷治癒、アテローム発生、血栓形成、そして当然癌に対する影響がある。LPAは、ヒトの乳房、子宮、前立腺、頭頸部、大腸の悪性腫瘍の進行と関連している。これらの初期の観察結果があるので、LPAが大腸癌由来細胞株の増殖を促進するという最近の報告は、LPAの下流での癌シグナル伝達の詳細解明に寄与するのではないかという大きな期待をもって迎えられた。LPAは、LPA2,3によるGαqの活性化、ホスホリパーゼCβの活性化、従来型(conventional)プロテインキナーゼCの活性化、およびグリコーゲンシンターゼキナーゼ3-βのリン酸化と阻害に依存してβ-カテニンの核への蓄積を促進することが示された。このキナーゼによってリン酸化されると、β-カテニンは細胞内分解されるようになる。LPAは、この分解を抑制し、β-カテニンの蓄積を促進する。β-カテニンは、細胞周期進行および遺伝子発現の制御に非常に重要な分子であり、リンパ系増強因子/T細胞因子感受性の転写と組み合わさることで両プロセスを活性化し、FOXO転写因子と組み合わさることで両プロセスを阻害する。LPAが細胞質および核でのβ-カテニンの蓄積を増加させることができることから、脂質メディエーターと癌におけるβ-カテニンシグナル伝達の調節不全とを結びつける新たな次元の知識が得られる。
C. C. Malbon, s-Catenin, Cancer, and G Proteins: Not Just for Frizzleds Anymore. Sci. STKE 2005, pe35 (2005).