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カスパーゼ阻害薬は代替的な細胞死経路を促進する

Caspase Inhibitors Promote Alternative Cell Death Pathways

Perspectives

Sci. STKE, 24 October 2006Vol. 2006, Issue 358, p. pe44
[DOI: 10.1126/stke.3582006pe44]

Peter Vandenabeele*, Tom Vanden Berghe, and Nele Festjens

Molecular Signalling and Cell Death Unit, Department for Molecular Biomedical Research, Flanders Interuniversity Institute of Biotechnology (VIB) and Ghent University, Fiers-Schell-Van Montagu Building, Technologiepark 927, B-9052 Ghent, Belgium.
*Corresponding author. E-mail, peter.vandenabeele@dmbr.ugent.be

要約 : カスパーゼ阻害薬の使用によって、アポトーシスに代わる予備の細胞死プログラムの存在が明らかになってきた。広域スペクトルのカスパーゼ阻害薬zVAD-fmkは、3種類の主要な細胞死を調節する。zVAD-fmkの添加によって、アポトーシス性細胞死が阻害され、細胞の壊死性細胞死に対する感受性が高まり、自己貪食性細胞死が誘発される。いくつかの研究により、キナーゼのRIP1およびアデノシンヌクレオチド輸送体(ANT)-サイクロフィリンD(CypD)複合体が壊死性細胞死に重要な役割を果たすことが示されている。zVAD-fmkを介する壊死性細胞死への感作のもとになる機構には、カスパーゼ-8を介するRIP1の分解の抑制と、ANT-CypD相互作用の阻害が関与している。RIP1は、自己貪食性細胞死にも関与している。カスパーゼ阻害薬とノックダウンを用いた研究により、自己貪食性細胞死におけるカタラーゼとカスパーゼ-8の負の役割が明らかにされた。壊死性および自己貪食性細胞死の双方でRIP1は正の役割、カスパーゼ-8は負の役割を果たすことから、これら2種類の細胞死経路は相互に関連があることが示唆される。壊死性細胞死は、ミトコンドリアの活性酸素種(ROS)産生、アデノシン三リン酸濃度の低下、その他の細胞傷害が関わる迅速な細胞応答を意味する。一方で自己貪食性細胞死は、最初はROSに傷害されたミトコンドリアを除去することによって生き残ろうとする試みとして始まる。しかし、この過程が過剰に起こると、自己貪食そのものが細胞傷害性となり、最終的には自己貪食性細胞死に至る。これらの代替的な細胞死経路の分子機構をさらに解明することによって、神経変性疾患、虚血-再灌流障害、感染症に伴う細胞死に対して有効な治療手段が得られる可能性があり、細胞傷害性の新たな癌治療戦略の開発が進む可能性もある。

P. Vandenabeele, T. Vanden Berghe, N. Festjens, Caspase Inhibitors Promote Alternative Cell Death Pathways. Sci. STKE 2006, pe44 (2006).

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