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炎症の消散におけるプロとパートタイムのケモカインデコイ

Professional and Part-Time Chemokine Decoys in the Resolution of Inflammation

Perspectives

Sci. STKE, 1 May 2007 Vol. 2007, Issue 384, p. pe18
[DOI: 10.1126/stke.3842007pe18]

Chris Hansell and Robert Nibbs*

Division of Immunology, Infection and Inflammation, Glasgow Biomedical Research Centre, Glasgow University, Glasgow G11 6NT, Scotland, UK.
*Corresponding author. E-mail: r.nibbs@clinmed.gla.ac.uk

要約 : 炎症は感染防御や損傷組織の修復に不可欠である。炎症が誘導され維持される仕組みについて今では多くのことがわかっているが、炎症の消散の根底にある過程は見過ごされる場合が多い。しかし、消散は組織の恒常性を回復させ、慢性炎症性疾患や自己免疫でみられるようなタイプの免疫病態を防ぐことから、すべての正常な炎症応答の不可欠な要素である。ケモカインと呼ばれる小さな分泌タンパク質は、ケモカイン受容体を介して作用し、炎症の開始と持続において白血球の動員と機能を調節するきわめて重要な因子であることが知られている。したがって、ケモカインを効率的に除去することが、順調な消散の必要条件であると考えられる。近年、この過程に能動的に関与する特化したケモカイン「デコイ」受容体の存在が明らかになった。さらにほかのケモカイン受容体は、二重生活を送り、炎症過程で白血球動員(シグナル伝達による)と消散(ケモカインの隔離による)という相反する役割を果たすことが提唱されている。最近のある研究では、アポトーシスを起こした炎症性白血球は表面のケモカイン受容体の数を増加させること、またこれらの受容体は炎症組織からケモカインを除去する能力を持つことが示され、この理論がさらに裏付けられている。白血球のアポトーシスでは、白血球が炎症組織から除去されるだけでなく、マクロファージに取り込まれることによって抗炎症性サイトカインを産生させるので、消散が促進されることがすでに知られている。新たな研究によって、ケモカインの隔離は瀕死の細胞が炎症の消散を助けるために利用するもう1つの機構である可能性が示唆されている。

C. Hansell, R. Nibbs, Professional and Part-Time Chemokine Decoys in the Resolution of Inflammation. Sci. STKE 2007, pe18 (2007).

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