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T細胞のHIV感染:アクチンの見え隠れ

HIV Infection of T Cells: Actin-in and Actin-out

Perspectives

Sci. Signal., 14 April 2009
Vol. 2, Issue 66, p. pe23
[DOI: 10.1126/scisignal.266pe23]

Yin Liu, Natalya V. Belkina, and Stephen Shaw*

Experimental Immunology Branch, National Cancer Institute, National Institutes of Health, Bethesda, MD 20892, USA.
* Corresponding author. E-mail, sshaw@nih.gov

要約 : 細胞骨格のアクチンがハイジャックされて、HIVの標的細胞への侵入を促進するという10年来の観察結果について、3つの研究が解き明かすこととなった。細胞膜に高濃度のCD4とCXCR4が集積するためにはアクチンが重合する必要がある。このことが、遊離ウイルスによる感染という単純なモデルでも、生理学的に関連性の高いウイルスシナプスを介する感染経路でも、ウイルスの結合と侵入を促している。アクチンと相互作用する3つのタイプのタンパク質、すなわちフィラミン、エズリン/ラディキシン/モエシン(ERM)およびコフィリンがこの過程において重要な役割を果たすことがこのほど明らかになった。フィラミンは、HIV gp120糖タンパク質のシグナル伝達によって促される方法で、CD4とCXCR4の両方に結合する。ERMタンパク質は膜にアクチンフィラメントを接触させ、アクチンの重合を促進すると思われる。アクチンフィラメントの初期重合を促すことが提唱されているコフィリンは、ウイルス侵入過程の初期には不活性の状態だが、侵入直後に活性化されてその後のイベントを促すことが報告されている。このようなコフィリンの複雑な働きが、アクチン重合が初期の結合と融合のステップを促進するが、それに続く侵入後の初期イベントの一部は阻害するというパラドックスを解決するために役立つかもしれない。

Y. Liu, N. V. Belkina, S. Shaw, HIV Infection of T Cells: Actin-in and Actin-out. Sci. Signal. 2, pe23 (2009).

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