分子ネットワークのモジュール性を理解するためには動力学が必要である

Sci. Signal., 28 July 2009
Vol. 2, Issue 81, p. pe44
[DOI: 10.1126/scisignal.281pe44]

Roger P. Alexander^1,2,3, Philip M. Kim^4,5,6,7, Thierry Emonet^1,2,8*, and Mark B. Gerstein^1,3,9*

¹ Program in Computational Biology and Bioinformatics, Yale University, New Haven, CT 06520, USA.
² Department of Molecular, Cellular and Developmental Biology, Yale University, New Haven, CT 06520, USA.
³ Department of Molecular Biophysics and Biochemistry, Yale University, New Haven, CT 06520, USA.
⁴ Terrence Donnelly Centre for Cellular and Biomolecular Research, University of Toronto, Toronto, ON M5S 3E1, Canada.
⁵ Banting and Best Department of Medical Research, University of Toronto, Toronto, ON M5S 3E1, Canada.
⁶ Department of Molecular Genetics, University of Toronto, Toronto, ON M5S 3E1, Canada.
⁷ Department of Computer Science, University of Toronto, Toronto, ON M5S 3E1, Canada.
⁸ Department of Physics, Yale University, New Haven, CT 06520, USA.
⁹ Department of Computer Science, Yale University, New Haven, CT 06520, USA.
* Corresponding authors. E-mail, thierry.emonet@yale.edu (T.E.); mark.gerstein@yale.edu (M.B.G.)

要約 : ゲノム配列決定時代の到来によって、細胞の有する装置を構成する厖大な数の分子部品が報告されている。システム生物学の基本的な目標は、遺伝学的にコードされた分子部品および非遺伝学的にコードされた小分子の時間的および空間的な相互作用から細胞の挙動が生まれる仕組みを理解することである。ネットワークは、分子間相互作用について入手可能なすべてのデータの組織化と定量的表現に対する自然な枠組みを提供する。分子ネットワークの構造学的および動力学的特性は、活発に研究されている題材である。大きな進展はあったものの、ネットワーク構造から動力学への橋渡し、つまり、構造と挙動を結びつけることは依然として難しい。生物学的ネットワークの機能解析に用いられる現代の操作の主要概念はモジュール方式である。分子ネットワーク解析のほとんどの手法は、多かれ少なかれ、分子ネットワークはモジュールであるという前提、すなわち分子ネットワークはいくつかの部分に分解でき、各部分をある程度まで個別に研究できるという前提に基づいている。本稿では、生物学的ネットワークのモジュール性解析における最近の進展について報告し、分子をモジュールにグループ分けし、それらのモジュールの共同的機能を決定するには動力学的な視点が欠かせないという認識の高まりに着目する。