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比較分析から、複数の疾患に関係する保存されたタンパク質リン酸化ネットワークが明らかになる

Comparative Analysis Reveals Conserved Protein Phosphorylation Networks Implicated in Multiple Diseases

Research Article

Sci. Signal., 28 July 2009
Vol. 2, Issue 81, p. ra39
[DOI: 10.1126/scisignal.2000316]

Chris Soon Heng Tan1,2*, Bernd Bodenmiller3*, Adrian Pasculescu1, Marko Jovanovic4, Michael O. Hengartner4, Claus Jørgensen1, Gary D. Bader1,2, Ruedi Aebersold3,5,6,7, Tony Pawson1,2, and Rune Linding8†

1 Samuel Lunenfeld Research Institute, Mount Sinai Hospital, Toronto, Ontario, Canada M5G 1X5.
2 Department of Molecular Genetics, University of Toronto, Toronto, Ontario, Canada M5S 1A8.
3 Institute of Molecular Systems Biology, Eidgenössische Technische Hochschule (ETH), 8093 Zurich, Switzerland.
4 Institute of Molecular Biology, University of Zurich, 8057 Zurich, Switzerland.
5 Institute for Systems Biology, Seattle, WA 98103, USA.
6 Competence Center for Systems Physiology and Metabolic Diseases, ETH Zurich, 8093 Zurich, Switzerland.
7 Faculty of Science, University of Zurich, 8057 Zurich, Switzerland.
8 Cellular & Molecular Logic Team, Section of Cell and Molecular Biology, The Institute of Cancer Research (ICR), London SW3 6JB, UK.
* These authors contributed equally to this work.
†To whom correspondence should be addressed. E-mail: linding@icr.ac.uk

要約 : プロテインキナーゼは細胞の情報処理を可能にする。ヒトにおいて数多くのリン酸化部位やその動態が特徴付けられてきたが、多くのシグナル伝達イベントの進化史および生理学的重要性はまだわかっていない。類似する実験的および計算的パイプラインを用いて決定された標的ホスホプロテオーム解析を用いて、進化的に離れたモデル生物(ハエ、線虫、酵母)におけるヒトのリン酸化イベントの保存性について検討した。配列アラインメント法を用い、6億年以上の進化の過程で位置が保存されているようであり、したがって、根本的な細胞過程に関与する可能性があるヒトタンパク質344個において479件のリン酸化イベントを同定した。この配列アラインメント解析から、多くのリン酸化部位は急速に進化したために、進化的に離れた生物では配列の位置に関してはあまり強い進化的保存性が認められないことが示唆された。それ故、我々は、保存されたキナーゼ-基質ネットワークを再構築するためのネットワークアラインメント法を考案し、698個のヒトタンパク質において778件のリン酸化イベントを同定した。いずれの方法でも、シグナルの統合ハブに加えて、リン酸化により厳密に調節されるタンパク質が同定され、疾患関連遺伝子にコードされるタンパク質において両タイプのリン酸化タンパク質が増加していた。これらの保存されたシグナル伝達イベントについて、細胞機能および構造的関連性について解析したところ、現在のホスホプロテオーム解析が不完全であることに気付いた。部位レベルおよびネットワークレベルでのリン酸化の保存性について検討することによって、進化が早いシグナル伝達イベントおよび古来のシグナル伝達イベントのいずれの探求にも有用であることが証明された。複数の複雑な疾患が、保存されたネットワーク内に集中しているように見えることが明らかになったことから、疾患の発症が共通の分子ネットワークに依存している可能性が示唆される。

C. S. H. Tan, B. Bodenmiller, A. Pasculescu, M. Jovanovic, M. O. Hengartner, C. Jørgensen, G. D. Bader, R. Aebersold, T. Pawson, R. Linding, Comparative Analysis Reveals Conserved Protein Phosphorylation Networks Implicated in Multiple Diseases. Sci. Signal. 2, ra39 (2009).

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