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CA1シナプスにおける長期増強中のシナプス前部および後部の変化の統合モデル

A Unified Model of the Presynaptic and Postsynaptic Changes During LTP at CA1 Synapses

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Sci. STKE,Vol. 2006, Issue 356, p. re11, 10 October 2006
[DOI: 10.1126/stke.3562006re11]

John Lisman1* and Sridhar Raghavachari2*

1Department of Biology, Brandeis University, Waltham, MA 02454, USA.
2Box 3209, Department of Neurobiology, Duke University Medical Center, Durham, NC 27710, USA.
*Corresponding author. E-mail, lisman@brandeis.edu; sri@neuro.duke.edu

要約 : 長期増強(LTP)は、海馬のCA1シナプスで詳細に研究されており、このプロセスにシナプス後部およびシナプス前部の変化を関連付ける知見が得られている。これらの変化には、(1)シナプス外の膜へのAMPAチャネルの追加およびシナプス外受容体とシナプス受容体の拡散性平衡、(2)シナプスへのAMPAチャネルの大きな集団形成を導く急激な追加、(3)グルタミン酸放出様式の変化(おそらくkiss-and-run型から完全融合型へ)、(4)遅れて起こる放出小胞数の増加、が含まれる。しかし、これらの変化が協力して働くかどうか(あるいは、どのようにして協力して働くか)は、まだ明らかになっていない。我々は、これらのプロセスのすべてをシナプスの構造的モデルに組み入れた。我々は、シナプスが、AMPAを介した伝達において準独立的に機能する経シナプスモジュールで構成されると提唱する。基底状態下では、シナプスは部分的にサイレントであり、AMPAサイレントである(しかし、NMDAを介した伝達に寄与)モジュールもあるが、機能性の(AMPAおよびNMDAを介した伝達に寄与)モジュールもある。LTP中は、小胞融合様式の急速な変化とAMPAチャネルに結合能のある多くのタンパク質(スロット)を含むシナプス後部複合体の急速な挿入(多スロット状態)が起こる。これらのシナプス前部および後部の変化が一体となった作用は、AMPAサイレントモジュールの機能性モジュールへの変換である。スロットへの受容体の結合数は、AMPA型受容体の一種であるシナプス外GluR1の急速な増加により一過性に促進される。より遅い経シナプス的な成長プロセスが、AMPAサイレントモジュールをシナプスに付加することで、放出される小胞数が増加してNMDA反応が増強される。このモデルにより、LTPが誘導する量子的パラメータ(quantal parameters)の変化を含む、幅広いデータが説明される。また、このモデルにより、GluR1ノックアウトが定常伝達、LTP、距離依存性スケーリングに与える多様な影響も説明される。

J. Lisman, S. Raghavachari, A Unified Model of the Presynaptic and Postsynaptic Changes During LTP at CA1 Synapses. Sci. STKE 2006, re11 (2006).

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