商品詳細:「AAT Bioquest社 カルシウム指示薬(検出プローブ/アッセイキット)」
- 【01】 カルシウム指示薬を使ってできることは何ですか?
- 【02】 カルシウム指示薬が複数種類ありますが、どのように選べばよいですか?
- 【03】 品名についている「AM」とは何ですか?
- 【04】 細胞内のカルシウム濃度はどのくらいですか?
- 【05】 各カルシウム指示薬のkd値を教えてください。
- 【06】 カルシウム指示薬の3つの一般的な化学形態は何ですか? /カルシウム指示薬の塩、デキストラン結合体、アセトキシメチル (AM) エステルの違いは何ですか?
- 【07】 AMエステルの原液の調製方法を教えてください。
- 【08】 構成品に使用されているHHBSとは何ですか?
- 【09】 特定の細胞タイプで蛍光カルシウム指示薬を使用する場合、プロベネシド(PBC)を使用してカルシウムフラックスアッセイを実施するのはなぜですか?
- 【10】 プロベネシド溶液のpH値はどれくらいですか?
- 【11】 プロベネシドを必要としないカルシウム指示薬はありますか?
- 【12】 ミトコンドリアのカルシウムフラックスとミトコンドリア膜電位の変化を同時に細胞内で測定できますか?
- 【13】 小胞体/ミトコンドリア/細胞質のカルシウム濃度をモニターする際のお勧めの指示薬はありますか?
- 【14】 植物細胞用のカルシウム指示薬はありますか?
- 【15】 フローサイトメトリーで細胞内カルシウム濃度や移動を測定する製品はありますか?
- 【16】 カルシウム指示薬の添加前または添加後に細胞を固定できますか?
- 【17】 Fluo-4のシグナルが弱いのですが。
- 【18】 細胞からFluo-4 AMが流出してしまいます。どうすればよいでしょうか。
- 【19】 Fluo-4 AMの細胞へのローディングが安定しません。要因として考えられるのは何ですか?
- 【20】 Fluo-4 AMのロード時の細胞へのダメージを最小限に抑える方法はありますか?
- 【21】 Fluo-4、Fluo-4 AMの分子量を教えてください。
- 【22】 Cal-520®、Cal-520FF®、Cal-520N®の違いは何ですか?
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カルシウムの結合時にスペクトル応答を示す蛍光指示薬を用いることで、蛍光顕微鏡、フローサイトメトリー、蛍光分光法、および蛍光マイクロプレートリーダー等の方法から、細胞内の遊離カルシウム濃度の変化を調べることができます。これらの蛍光指示薬の多くは、カルシウムに応答するPETシステムを組み込んだBAPTAキレート剤の誘導体です。
蛍光カルシウム指示薬を選択する際の考慮すべき判断軸は以下の通りです。
- 指示薬の化学形態(塩、デキストラン複合体、 AMエステル)
化学形態によって細胞透過性が異なり、細胞へ指示薬を導入する際に必要な処理が異なります。使用する実験系に合わせて導入方法をお選びください。詳しくはQ3をご覧ください。 - モード(単一波長およびレシオメトリック インジケーター)
蛍光イオン指示薬は、単一波長とレシオメトリックの2つのカテゴリに分類されます。
定性分析には、単一波長の指示薬が推奨されます。
それらの広いダイナミックレンジとさまざまな解離定数により、適度な一時的なカルシウム変化を検出する感度が高くなります。カルシウムのキレート化により、単一波長は蛍光強度を100倍以上増加させることができます。
イオン濃度の定量的な測定には、レシオメトリック(2波長)インジケータが推奨されます。
レシオメトリックインジケーターは、遊離カルシウムと結合したときに最適な吸収または蛍光波長強度が変化するユニークなスペクトル特性を有しています。
この測光データから得られる比率は、色素の偏在、色素の漏れ、光退色、細胞容積変化などの悪影響を軽減し、細胞内カルシウム濃度を正確に測定することができます。 - スペクトル特性
指示薬の励起および蛍光波長は、使用する機器、励起光源、およびサンプルの種類に大きく依存します。たとえば、組織深部のカルシウムイメージングや緑色のカルシウム指示薬とのマルチプレックスには、Calbryte™ 630 AM (#20722) などの長波長の指示薬をご検討ください。 - 解離定数 (Kd値)
Kd値は、指示薬がカルシウムイオンにどれだけ強く結合できるかを表します。その値は、平衡状態で指示薬の半分がカルシウムに結合する濃度に対応します。関心のあるカルシウム濃度範囲と互換性のある適切な K dを持つ指示薬を選択してください。カルシウム指示薬の Kd値は、pH、温度、イオン強度、粘性、タンパク質結合、Mg 2+ およびその他のイオンの存在など、多くの要因に依存します。また、細胞内でのカルシウム指示薬のKd値は、通常、無細胞溶液で測定された対応する値よりも高くなる傾向があることにご注意ください。 各カルシウム指示薬のKd値はQ5に記載がございます。
"AM"はアセトキシメチル基を表します。AM基は負に帯電したカルボキシル基(各指示薬のカルシウムイオンのキレートに必要な部分)の修飾に使用されています。
- 指示薬は負に帯電しているため細胞不透過性であり、侵襲的なローディング技術が必要となります。そこで、AM基でマスクすることにより、指示薬は細胞膜透過性となり非侵襲的に生細胞にロードすることができます。
- 細胞内に入ると、非特異的な細胞内エステラーゼがAM基を加水分解(切断)し、細胞質内に保持されるカルシウム指示薬となります。
静止しているとき、細胞の細胞内カルシウム濃度は約100 nMです。ホスホリパーゼC経路などの細胞質カルシウム濃度を増加させるシグナル伝達経路の活性化は、カルシウム濃度を1000 nMまで増加させます。細胞のカルシウム濃度を測定するための適切な指示薬を選択するときは、この範囲内のKd値を持つものをお選びください。
主なカルシウム指示薬のKd値は次のとおりです。
カルシウム指示薬 | Kd(単位にご注意ください) |
---|---|
Fluo-3 | 325 nM |
Fluo-4 | 345 nM |
Fluo-8® | 389 nM |
Fluo-8H® | 232 nM |
Fluo-8L® | 1.86 µM |
Cal-520® | 320 nM |
Cal-520FF™ | 9.8 µM |
Cal-520N™ | 90 µM |
Cal-590™ | 561 nM |
Cal-630™ | 792 nM |
Calbryte™ 520 | 1.2 µM |
Calbryte™ 590 | 1.4 µM |
Calbryte™ 630 | 1.2 µM |
カルシウム指示薬の3つの一般的な化学形態は、塩、デキストラン結合体、およびアセトキシメチル (AM) エステルです。
塩は親水性であり、膜透過性を持たないため、ローディングを必要とします。一般的な細胞へのロード方法としてはマイクロインジェクション、パッチクランプピペットからの拡散、エレクトロポレーション、リポソームを使用したリポトランスファーなどがあげられます。細胞に導入されると、Ca2+指示薬の塩形態は急速に平衡化し、数分以内に Ca2+イメージング測定に使用できます。
デキストラン結合体は、区画化の問題に対処するために特別に設計されています。デキストランは水への溶解度が高く、毒性が低く、数日にも及ぶ非常に長い記録期間にわたって区画化を示しません。ただし、こちらも塩と同様に膜透過性を持たないため、細胞に侵襲的に導入する必要があります。
AMエステルを含むカルシウム指示薬は膜透過性があり、培地に添加するだけで細胞にロードされます。次に、細胞内エステラーゼがAMグループを切断することで、色素を細胞内に閉じ込めることができるため、細胞への導入が簡便です。また、AM結合体は細胞内区画の標識が可能です。例えば、低親和性Ca2+指示薬を使用し て、小胞体内のCa2+レベルをモニターすることができます。
AMエステルは、無水ジメチルスルホキシド (DMSO) に溶かして保存する必要があります。AMエステルストック溶液を調製する場合、AMエステルをできるだけ濃縮したストック (1 mM から 20 mM など)で調製し保存することをお勧めします。これにより、細胞へのロード時に溶液に持ち込まれるDMSOの量を最小限に抑えることができます (理想的には < 0.1%)。可能な限り、実験と同じ日にAMエステル溶液を調製して使用することを強くお勧め致します。
特定の質量のAMエステルを特定の濃度に溶かすために必要なDMSOの量は次のように計算します。
質量 (g) = 濃度 (mol/L) × 体積 (L) × 分子量 (g/mol)
体積 (L)=質量 (g)/[濃度 (mol/L)×分子量 (g/mol)]
※質量:既知の容量と濃度の原液を調製するために必要なAMエステルの量。
液量:既知のAMエステルの質量を目的の濃度に溶解するために必要なDMSOの量
濃度:単位溶液体積あたりに存在する溶質の量
分子量:AMエステル化合物の分子量
数式を並べ替えて、体積を求めます。
AAT Bioquest社のメーカーウェブページでは、各製品ページにモル濃度計算機が実装されており、こちらを使用して、原液の質量、体積、および濃度を計算できます。
HHBSは20 mM Hepes バッファーを含むハンクス平衡塩類溶液(#20011)の略称で、細胞の洗浄、細胞または組織サンプルの輸送、計数のための細胞の希釈、試薬の調製など、さまざまな細胞培養アプリケーションに使用されるBufferです。カルシウムとマグネシウムを含む製剤は、一般に輸送媒体として、またはカルシウムチャネルアッセイや膜電位アッセイなどのイオンチャネルアッセイにおける試薬調製に使用されます。
プロベネシドは、有機アニオントランスポーターの阻害剤です。有機アニオントランスポーターは、多くの細胞型で発現しており、多数の内在性代謝産物および外来有機陰イオンの細胞外への排泄において重要な役割を果たします。細胞内で蛍光カルシウム指示薬がカルシウムに結合すると、カルシウム指示薬の蛍光強度が大幅に高まり、カルシウムの動きをリアルタイムで検出できます。
しかし、細胞にカルシウム指示薬がロードされた後、有機アニオントランスポーターは指示薬を細胞外に排出します。このようなトランスポーターは、CHO細胞や HeLa細胞などの細胞種で特に活性があります。これらの場合、プロベネシドはこれらのトランスポーターを阻害し、指示薬の細胞内保持性を改善するために、カルシウム指示薬と併用されます。
ただし、プロベネシド溶液の調製はアッセイ手順に多くのステップを追加するだけでなく、明らかな細胞毒性も示します。さらに、プロベネシドは、サイクリックヌクレオチド依存性イオンチャネルのカルシウム流動動態を変化させ、GPCR のアゴニストに対するチャネルの応答を低下させます。
プロベネシド試薬では、水への溶解度が非常に低いことが知られています。ABD社では水への溶解度を改善したプロベネシドのナトリウム塩および溶解済みのプロベネシド25 mM安定化水溶液のご用意がございます。
ReadiUse™ probenecid, sodium salt (#20061)- HHBS中
25 mM : pH = 7.5 , 2.5 mM : pH = 7.5 - 水中
25 mM : pH = 11.0 , 2.5 mM : pH = 9.5
- 25 mM ストックbuffer中 : pH = 8.0
- 水中 5 mM : pH = 7.0
- HHBS中 5 mM : pH = 7.0
はい、以下のカルシウム 指示薬は細胞内保持特性が改善されており、プロベネシドを必要としません。
- Cal-520® AM(#21131)
- Cal-590™ AM(#20512)
- Calbryte™ 520 AM(#20653)
- Calbryte™ 590 AM(#20702)
- Calbryte™ 630 AM(#20722)
- Fura-10™, AM(#21114)
はい。 Calbryte™-520 AM(#20653)やFluo-4 AM(#20550)等の蛍光カルシウム指示薬と、TMRM (#22221)等のミトコンドリア膜電位マーカーを使用することで、ミトコンドリアカルシウムフラックスと膜電位の変化を同時にモニタリングできます。
小胞体内のカルシウム濃度モニターにはRhod-5N, AM(#21070)をお勧め致します。
ミトコンドリア内のカルシウム濃度モニターにはRhod-2 AM(#21064)をお勧め致します。
細胞質内のカルシウム濃度モニターにはCalbryte™-520 AM(#20651)をお勧め致します。
はい、Fluo-4 AM、Fluo-8® AM、Calbryte™ 520 AMなど、哺乳動物細胞で一般的に使用されるカルシウム指示薬のほとんどは、植物細胞でも使用可能です。これらのカルシウム指示薬の中で、Fluo-4 AM(#20551) は植物細胞で最も多く使用されています。より良いパフォーマンスを得るには、Calbryte™ 520 AM(#20651)にアップグレードすることをお勧めします。Calbryte™ 520 AMは、Fluo-4 AMよりもロードが容易で、細胞内保持が良好で、S/N比が高くなっています。
はい、AAT Bioquest社のCell Meter™ Flow Cytometric Calcium Assay Kit(#36310)が該当製品となります。キネティックリーディングモードまたはエンドポイントリーディングモードのいずれかでフローサイトメーターを使用した、細胞内カルシウム濃度と移動を検出するための便利でシンプルな蛍光ベースのアッセイです。このキットは、当社の細胞透過性緑色カルシウム指示薬Calbryte™ 520 AM(Ex/Em = 492/514)を使用しています。
細胞を固定すると、細胞内に色素を保持する細胞の能力が損なわれます。カルシウム検出色素のために細胞を固定することはお勧めできません。
蛍光シグナルが弱いときは、選択した指示薬のKd値が適切でないことを示します。Fluo-4のKd値は345 nMです。Calbryte™ 520 AMや、Fluo-8FF® AMなどの代替品を使用してください 。また、指示薬濃度が高いと、細胞が損傷したり、Ca2+クエンチングが生じたりする可能性があります。さまざまな濃度をテストし、有効かつ可能な限り低いモル濃度条件を検討してください。
通常、Fluo-4 AMは適度な細胞内保持力を有しています。指示薬が細胞から漏出している場合は、次のようなトラブルシューティングを行うことをお勧めします。
- プロトコルが細胞種に対して最適化されているかご確認ください。
- 温度を下げると、細胞の漏出が緩和されます。
- 培地にプロベネシドを追加することでも、細胞の漏出が緩和されます。
細胞の種類によって適切な条件が異なります。調製方法が正しくない、または調子の悪い細胞は、実験結果を不安定化させます。そのため、細胞の調製またはプロトコルを最適化する必要がある場合があります。推奨されるプロトコル通りのキットを使用するとで、再現性が向上する場合もございます。
ローディングが不安定になるもう 1つの一般的な要因は培地です。無血清培地を使用していない、細胞培地がコンタミしている、もしくはサンプルに適していないことでローディングがうまくいかない可能性が考えられます。細胞外のエステラーゼはAMを分解することで膜浸透性を弱め、ローディングを阻害する可能性があります。エステラーゼ活性を避けるために、培地には必ず無血清培地を使用してください。
カルシウム指示薬ロード時の細胞へダメージは一時的なものであり、持続的な細胞ダメージではありません。細胞への一時的な損傷を最低限にするには、下記のような方法がお勧めです。
- カルシウム指示薬は細胞毒性を持つDMSOに溶けておりますので、添加時にDMSOが局所的に濃い状態を作らないよう、指示薬と培地を混合後に細胞へ添加することをお勧め致します。
- イメージングの系が複雑な場合は、Ca2+および Mg2+イオンの指示薬である Mag-Fluo-4 AMなど、複数のイオンの追跡を可能にする単一の蛍光体を使用することで、細胞ストレスを最小限に抑えることができます。
エステル化していない酸性型のFluo-4の分子量は 736.63 g/molです。アセトキシメチル(AM)エステル型であるFluo-4 AMの分子量は 1096.95 g/molです。
これらのカルシウム指示薬は主にKd値が異なります。
- Cal-520®:320 nM
- Cal-520FF™:9.8 µM
- Cal-520N™:90 µM