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アポトーシス:DNAヌクレアーゼ「二重因子」

APOPTOSIS:
A DNA Nuclease "Double Agent"

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2003, Issue 190, pp. tw256, 8 July 2003.
[DOI: 10.1126/stke.2003.190.tw256]

要約 : DNAを調べて損傷を修復し、時には複製の補助も行う因子は数多くある。しかし、プログラムされた細胞死が開始されると、DNAは断片化され、最終的には、完全には解明されていない機構によって分解される。Parrishらは、これらの2つの相反する事象において作用すると考えられる酵素を同定した。哺乳動物と線虫(Caenorhabditis elegans)では、EndoG(線虫ではCPS-6)と呼ばれるヌクレアーゼが、アポトーシス性DNA分解に関係している。この酵素はミトコンドリア中に存在するが、核に移動し、そこですでに開始されているDNA破壊をさらに進ませると考えられる。機能性CPS-6を欠失している線虫は細胞死の遅延と、発生中のTUNEL(末端デオキシリボヌクレオチジルトランスフェラーゼ仲介性dUTP-ビオチンニック末端標識)-反応性DNA破壊の蓄積を示す。RNA干渉に基づく全ゲノム範囲の機能的スクリーニングによって、著者らは、この保存されているDNA分解経路を誘導しているCPS-6の補因子として、CRN-1と呼ばれる細胞死関連ヌクレアーゼを同定した。皮肉なことに、CRN-1は、DNA複製および修復因子である哺乳動物のFlapエンドヌクレアーゼ-1(FEN-1)の相同体である。本研究では、CRN-1が発生中を通じて核内のいたるところで発現されること、およびCRN-1の発現を低下させた幼虫がCPS-6変異体と同じ表現形を示したことを明らかにしている。組み換えCRN-1も、放射標識CPS-6と結合し、これらの酵素の両方がin vitroで共同して作用した−それぞれが、他方のヌクレアーゼ活性を促進した。FEN-1の既知のエンドヌクレアーゼ活性とエキソヌクレアーゼ活性に加えて、CRN-1はさらに、一本鎖のギャップを用いて二本鎖DNAを切断する別のエンドヌクレアーゼ活性を示した。著者らは、CPS-6とCRN-1がDNAニック、ギャップ、および断片を作成する全体的なアポトーシス性DNA分解機構の一部であると述べている。ヌクレアーゼのCPS-6との結合によって、CRN-1は、DNA複製と修復の作業からそのゲノムの破壊へと、スイッチを切り替えることができる。

J. Z. Parrish, C. Yang, B. Shen, D. Xue, CRN-1, a Caenorhabditis elegans FEN-1 homologue, cooperates with CPS-6/EndoG to promote apoptotic DNA degradation. EMBO J. 22, 3451-3460 (2003).

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