左右非対称性 繊毛間伝達

LEFT-RIGHT ASYMMETRY:
Cilia-to-Cilia Communication

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2003, Issue 191, pp. tw269, 15 July 2003.
[DOI: 10.1126/stke.2003.191.tw269]

要約 : ヒトを含めた多くの生物は、左右対称性に加えて左右(L-R)非対称性を示す。分子の非対称性は、nodal、lefty-2、Pitx2といった左右非対称遺伝子が非対称的に局在化して発現する形で、可視的な非対称性より先に生じる。非対称性に影響する遺伝子突然変異の解析により、微小管、それに付随するモーター、および繊毛が、L-R非対称性を正常に確立するうえで重要であることが指摘された。McGrathらは、緑色蛍光タンパク質(GFP)で標識した左-右ダイニン(LRD)を含有するマウスを作成した。LRDは、突然変異するとL-R非対称性の欠損を引き起こすことが知られている遺伝子の産物である。胎生7.5日(E7.5)の胚で、すべての繊毛を可視化するためアセチル化チューブリンの標識を行い、また、GFP-LRDを可視化した。胚の結節域には、2種類の繊毛、すなわち、中心部におけるLRDを含む運動性繊毛、および周辺部におけるLRDを含まない非運動性繊毛が存在した。すべての結節繊毛は、多発性嚢胞腎疾患で変異している遺伝子の産物である、カルシウム依存性カチオンチャネルポリシスチン-2(Pkd2)も発現していた(マウス遺伝子の突然変異も同様に非対称性の欠損を引き起こす)。結節における繊毛運動が細胞外液の流れを発生させた期間(E7.75)には、結節右側の内胚葉細胞においてのみカルシウムシグナルが検出された。結節周囲のカルシウムシグナル伝達は、LRD-欠損胚では異常であり、pkd2-欠損胚には存在しなかった。以上から著者らは、初期のL-R非対称性は中心部の運動性繊毛が生み出す左方向の流れによって結節に生じ、それがPkd2依存的に周辺部の非運動性繊毛によって感知され、非対称のカルシウムシグナルが生じると提案している。

J. McGrath, S. Somio, S. Makova, X. Tian, M. Brueckner, Two populations of node monocilia initiate left-right asymmetry in the mouse. Cell 114, 61-73 (2003).

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