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骨のリモデリング STAT1は(核からの)Runx2隔離によって骨形成を抑制する

BONE REMODELING:
STAT1 Sequesters Runx2 to Limit Bone Deposition

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2003, Issue 197, pp. tw328, 26 August 2003.
[DOI: 10.1126/stke.2003.197.tw328]

要約 : Kimらは、STAT1(シグナル伝達性転写因子1)の新たな働きとして、骨芽細胞(骨を形成する細胞)の分化を阻害することを見出した。STAT1は現在まで、破骨細胞(骨を分解・吸収する細胞)に対し、インターフェロン依存性経路を通して、分化を阻害することが知られていた。しかし、STAT1–/–マウスの骨解析により、破骨細胞数が増加しているにもかかわらず、実際には、マウスの骨密度は増加していた。変異マウスでは骨形成速度が増加しており、また、変異マウスから培養した前駆細胞では、骨芽細胞分化が野生型に比べて促進していた。その骨の表現型は、破骨細胞分化を阻害するインターフェロン経路に欠陥があるマウス(IFNAR–/–またはIRF9–/–マウス)に見られたものと異なっていたことから、STAT1は異なる経路を介して、骨芽細胞の分化を阻害することが示唆された。事実、培養細胞において、インターフェロン経路を活性化するサイトカインで処理した際には、骨芽細胞分化は影響を受けなかった。その一方で、Smadシグナルの活性化を通して、Smadと転写因子Runx2の相互作用を誘導する骨形成因子(BMP-2)応答性の骨芽細胞分化が、STAT1欠損細胞では促進していた。STAT1およびRunx2を共発現させると、STAT1はRunx2依存性レポーター遺伝子の発現を阻害したが、その際に、Smad特異的レポーター遺伝子の発現は影響を受けなかった。また、STAT1が欠損した骨芽細胞においては、Runx2のDNA結合が増加していた。培養骨芽細胞において、STAT1はRunx2と共に免疫沈降したが、この相互作用はBMP-2で処理すると減少した。STAT1のリン酸化は、Runx2との相互作用やDNA結合の阻害には不要であった。しかし、細胞をインターフェロンγで処理し、STAT1のリン酸化および二量体化を促進すると、STAT1とRunx2との相互作用は減少した。STAT1およびRunx2を293T細胞で共発現させると、STAT1はRunx2を細胞質中に滞留させた。以上のことから、著者らは、サイトカインの刺激がない場合には、STAT1はRunx2と相互作用することにより核移行を阻害し、骨芽細胞の分化を抑制することを示している。

S. Kim, T. Koga, M. Isobe, B. E. Kern, T. Yokochi, Y. E. Chin, G. Karsenty, T. Taniguchi, H. Takayangi, Stat1 functions as a cytoplasmic attenuator of Runx2 in the transcriptional program of osteoblast differentiation. Genes Dev. 17, 1979-1991 (2003).

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