• ホーム
  • 薬理学 インバースアゴニスト--本当に二重の有効性を持ったリガンドか?

薬理学 インバースアゴニスト--本当に二重の有効性を持ったリガンドか?

PHARMACOLOGY:
Inverse Agonists--Really Dual Efficacy Ligands?

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2003, Issue 203, pp. tw386, 7 October 2003.
[DOI: 10.1126/stke.2003.203.tw386]

要約 : インバースアゴニスト(inverse agonists)とは、受容体の不活性構造を安定化できるものとして定義され、定常レベルより低くシグナル伝達を減少させる。Azziらは、β2-アドレナリン受容体(β2AR)リガンドがGタンパク質を介したシグナル伝達のインバースアゴニストで、アデノシン3’,5’-一リン酸(cAMP)を減少させること、ならびに細胞外シグナル調節性キナーゼ1および2(ERK1/2)マイトジェン活性化プロテインキナーゼ(MAPK)カスケードの活性化に対する部分的なアゴニストであることを示している。ERK1/2の活性化には、Gタンパク質サブユニットであるGαiおよびGαsは関与しなかったが、非受容体型チロシンキナーゼであるSrcが必要であった。さらに、β-アレスチンのドミナントネガティブフラグメントまたはβ-アレスチン欠損細胞を用いた実験により、これらのインバースアゴニストがERK1/2を活性化するためには、足場および受容体脱感作に関与するタンパク質であるβ-アレスチンが必要であることが示された。しかし、β-アレスチンとβ2ARの複合体は検出が極めて難しいことから、一過性かつ低親和性の相互作用であることが示唆されている。以上のβ2ARに関する研究結果は、これらのインバースアゴニストを高血圧や、β-アドレナリン受容体シグナルの結果とされる心肥大を特徴とする心不全の治療に使用する上でとりわけ重要である。このインバースアゴニストの部分的なアゴニスト活性は、他のGタンパク質共役受容体でもみられることから、インバースアゴニストは実質的に、特定の下流経路を活性化(MAPK経路)または阻害(cAMP経路)できる、二重特異性のリガンドである可能性が示唆されている。

M. Azzi, P. G. Charest, S. Angers, G. Rousseau, T. Kohout, M. Bouvier, G. Pineyro, s-Arrestin-mediated activation of MAPK by inverse agonists reveals distinct active conformations for G protein-coupled receptors. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 100, 11406-11411 (2003).

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る

バックナンバー一覧へ