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アテローム性動脈硬化症 病原体が脂質代謝を損なう

ATHEROSCLEROSIS:
Pathogens Take a Toll on Lipid Metabolism

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2003, Issue 206, pp. tw418, 28 October 2003.
[DOI: 10.1126/stke.2003.206.tw418]

要約 : Castrilloらは、Toll様受容体(TLR、病原体モチーフの認識に用いられる)およびLXR(肝臓X受容体、コレステロール代謝の転写制御因子で、マクロファージの脂質負荷に対する恒常性反応に重要である)間のクロストークを明らかにし、病原体が心臓血管疾患の原因となる機構を提示した。ウイルス感染および細菌感染が、慢性炎症ならびに脂質代謝異常を伴うアテローム性動脈硬化症の原因の一つであることは以前から疑われていたが、自然免疫応答が脂質代謝と相互作用する機構は不明であった。Castrilloらは、マウス培養マクロファージを大腸菌(Escherichia coli)やインフルエンザAウイルスに感染させ、ノーザン解析またはリアルタイム定量PCR法を用いて、こうした感染によりLXRアゴニストはコレステロール流出および脂質代謝に関与する遺伝子の発現を誘導できなくなることを示した。TLR3リガンドおよびTLR4リガンドは、LXR標的遺伝子(apoEやコレステロールトランスポーターABCA1など)の発現だけでなく、マクロファージからのコレステロール流出も阻害していた。著者らは、遺伝子レポーターを導入した細胞を用いて、TLR3リガンドおよびTLR4リガンドで処理するとLXRはその標的を転写活性化できなくなることを示した。さまざまな機能獲得系および機能喪失系の実験により、こうしたTLRシグナル伝達作用は、MyD88やNF-κBの活性化、インターフェロン産生を伴う標準的なTLR経路とは無関係であり、転写因子IRF3に仲介されることが明らかになった。以上より、TLRシグナル伝達はLXR依存性経路を阻害することによって、病原体がマクロファージのコレステロール処理を阻害してアテローム性動脈硬化症を促進する機構を支えていると考えられる。

A. Castrillo, S. B. Joseph, S. A. Vaidya, M. Haberland, A. M. Fogelman, G. Cheng, P. Tontonoz, Crosstalk between LXR and Toll-like receptor signaling mediates bacterial and viral antagonism of cholesterol metabolism. Mol. Cell 12, 805-816 (2003).

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