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記憶:プロテインキナーゼAを忘れる

MEMORY:
Forgetting About Protein Kinase A

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2003, Issue 209, pp. tw444, 18 November 2003.
[DOI: 10.1126/stke.2092003TW444]

要約 : 加齢は記憶障害を伴うことが多い。様々な研究により、プロテインキナーゼA(PKA)シグナル伝達の活性化が、海馬での長期増強(シナプス効率の頻度依存性の増加)および長期記憶の強化に関与するとされている。したがってPKAの活性化は、加齢に関連した記憶障害を軽減することを目的とした介入の治療標的として魅力あるものである。しかし、脳の領域によって仲介する記憶の形態は異なり、また、これらの領域の一部では、記憶障害との神経生物学的な関連性が十分に解明されていない(Baxter参照)。Ramosらは、PKAの活性化剤または阻害剤をラットの前頭前野に注入し、空間性ワーキングメモリ(前頭前野と関連がある)を検査した。記憶障害のある老齢ラットでは、記憶はPKA阻害により改善し、またPKA活性化により低下した。加齢に関連した認知機能障害の程度が高いほど、PKA調節の効果は大きかった。同様に老齢サルでは、ホスホジエステラーゼの阻害により空間性ワーキングメモリが低下した。著者らは、ウェスタンブロット法、免疫組織化学法、ゲルシフト法を用いて、若齢ラットおよび老齢ラットの大脳皮質、海馬、小脳におけるPKAシグナル伝達経路の活性を比較した。老齢ラットの前頭前野では、リン酸化されたCREB(cAMP応答配列結合タンパク質)に染色される細胞数の増加、細胞あたりのより強いリン酸化CREB染色、そしてcAMP応答配列との結合の促進が認められたが、海馬や小脳ではこのような現象はみられなかった。したがって、海馬とは対照的に前頭前野では、PKA経路の活性化が加齢に関連した記憶障害に関与していると考えられる。

B. P. Ramos, S. G. Birnbaum, I. Lindenmayer, S. S. Newton, R. S. Duman, A. F. T. Arnsten, Dysregulation of protein kinase A signaling in the aged prefrontal cortex: New strategy for treating age-related cognitive decline. Neuron 40, 835-845 (2003).

M. G. Baxter, Age-related memory impairment: Is the cure worse than the disease? Neuron 40, 669-670 (2003).

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