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経路モデリング フェロモンシグナル伝達の予測モデル

PATHWAY MODELING:
Predictive Model of Pheromone Signaling

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2003, Issue 210, pp. tw454, 25 November 2003.
[DOI: 10.1126/stke.2102003TW454]

要約 : 複雑なシグナル伝達ネットワークを全面的に理解し、その挙動を予測できるようになるためには、シグナル伝達の動的変化を追跡するための定量モデルが必要である。Haoらは、酵母における接合フェロモンに応じたGタンパク質のシグナル伝達の研究の中で、実験およびコンピューターの解析能力についての明確な一例を提示している。研究者らは、定量免疫ブロットを用いて、一細胞あたりのGタンパク質αサブユニット(約8000コピー)およびRGSタンパク質(約2000コピー)の量を決定した。Gタンパク質シグナル伝達の制御因子であるRGSは、Gαタンパク質のグアノシン三リン酸脱リン酸化活性を増強する抑制因子である。研究者らはまた、フェロモンに応じたこれらのタンパク質の量の変化や、これらのタンパク質やGβγサブユニットの量が倍増した場合にシグナル伝達に与える影響も測定した。常微分方程式に基づいたモデルは、フェロモンに応じてRGSタンパク質の合成が増加すると、長期のシグナル伝達が阻害されるというフィードバックループと一致していた。しかし、モデル予測が実験データと一致しないことや、RGSタンパク質を過剰に発現する細胞において二者択一性の(全面的かまたは全くないかのどちらか)シグナル伝達が観察されたことから、著者らは、フェロモン依存性のRGSタンパク質分解を引き起こすポジティブフィードバックループを検討するに至った。タンパク質濃度のランダム変動をシミュレートする確率項を含めた修正モデルは、実験データと一致していた。モデリングから予測された予期せぬポジティブフィードバックループが実際に存在するか否かを判断するために、著者らはフェロモン依存性のRGSタンパク質分解をモニターし、今まで知られていなかったフェロモン誘導性のRGSタンパク質のユビキチン化を見出した。著者らは、比較的単純で、かつ高度な研究が行われている酵母フェロモンシグナル伝達経路に対して、経路全体のさらに進んだコンピューターシミュレーションが実施できる可能性があると記している。

N. Hao, N. Yildirim, Y. Wang, T. C. Elston, H. G. Dohlman, Regulators of G protein signaling and transient activation of signaling: Experimental and computational analysis reveals negative and positive feedback controls on G protein activity. J. Biol. Chem. 278, 46506-46515 (2003).

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