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アポトーシス チトクロームcとIP3R:致命的な握手

APOPTOSIS:
Cytochrome c and IP3R: A Deadly Handshake

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2003, Issue 212, pp. tw471, 9 December 2003.
[DOI: 10.1126/stke.2122003TW471]

要約 : ミトコンドリアおよび小胞体(ER)はいずれもアポトーシス経路に関与するが、ERからのカルシウムの放出がこの細胞死のプロセスの一因であるとされている(Mattson and Chan参照)。ERからのカルシウムの放出は多くの非病理学的なシグナル伝達プロセスにも関与しており、Boehningらは、ミトコンドリアから放出されるチトクロームc(cyt c)とERのイノシトール三リン酸受容体(IP3R)との相互作用が、ERからのカルシウムの放出が病理学的レベルに到達する方法であるという可能性を示している。cyt cとIP3Rとの相互作用は酵母two-hybrid法において同定されたが、これらの2種類のタンパク質は、広域スペクトルのキナーゼ阻害因子でアポトーシスを誘導するSTSで処理した細胞から共に免疫沈降した。さらに、STSで処理した細胞の細胞分画研究により、cyt cはER分画に蓄積しミトコンドリア分画からは減少することが示された。cyt cのER分画への移動は細胞をカスパーゼ阻害剤に曝露しても阻害されなかったことから、cyt cの移行はアポトーシスのカスパーゼの活性化より前に生じることが示唆される。蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)分析により、STSでアポトーシスを誘導した後cyt cおよびIP3Rは密接に会合することが示された。IP3Rはカルシウムに対して感受性であるため、ナノモル域の濃度(細胞における休止レベル)で、カルシウムはIP3Rからのカルシウムの放出を活性化する。対照的に、それより高いマイクロモル濃度のカルシウムでは、IP3Rにより誘導されたカルシウムの放出はカルシウムにより阻害される。ミクロソーム分画をcyt cおよびマイクロモル濃度のカルシウムに曝露したところ、IP3Rによるカルシウム放出はカルシウムにより阻害されなかった。カルシウムのスパイクはミトコンドリアからcyt cが放出される前に生じ、その後はカルシウム濃度が上昇したまま留まることが、in vivoにおけるカルシウムイメージングにより示唆された。IP3Rのcyt c結合ドメインの発現はドミナントネガティブとして作用し、STSに応じたカルシウム振動とcyt c放出が阻害された。すなわち、わずかな量のcyt cが放出されると、それらはER上でIP3Rと相互作用し、ERからのカルシウムの放出がカルシウムにより阻害されるのを妨げる。その結果として生じるカルシウムの全体的な増加は、cyt cの大量放出を引き起こした後、ポジティブフィードバックループにおいて作用し、IP3Rを介してERからのカルシウムの放出を維持する。

M. P. Mattson, S. L. Chan, Calcium orchestrates apoptosis. Nat. Cell Biol. 5, 1041-1043 (2003).

D. Boehning, L. Patterson, L. Sadaghat, N. O. Blebova, T. Kurosaki, S. H. Snyder, Cytochrome c binds to inositol (1,4,5) trisphosphate receptors, amplifying calcium-dependent apoptosis. Nat. Cell Biol. 5, 1051-1061 (2003).

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