• ホーム
  • シナプス可塑性:LTPの亢進にもかかわらず起こった記憶の障害

シナプス可塑性:LTPの亢進にもかかわらず起こった記憶の障害

SYNAPTIC PLASTICITY:
Impaired Memory Despite Enhanced LTP

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2004, Issue 215, pp. tw14, 13 January 2004.
[DOI: 10.1126/stke.2152004TW14]

要約 : 現在、学習および記憶に関連するシナプス可塑性は、長期増強(LTP)と呼ばれるシナプス伝達効率の増強に基づいてモデル化されており、それには、cAMPシグナル伝達およびプロテインキナーゼAが関与することが知られている(Mansuy参照)。Pinedaらは、アデニリルシクラーゼを阻害するGタンパク質Gαiの関与について、薬理学的阻害や遺伝子ノックアウト(Gαi1-/-)もしくはアンチセンスオリゴヌクレオチドによるGαiの除去により、マウスを解析し、いずれも生体における記憶の形成を同様に破壊することを示した。百日咳毒素をマウス海馬のCA1領域に投与すると記憶が破壊されることが、2種類の行動試験により測定された。また、ノックアウトマウスには、全部ではないが一部の記憶試験で障害がみられたことから、異なる様式の記憶の形成に関与するシグナル伝達経路の特異性が示唆される。しかし、ホモ接合体およびヘテロ接合体マウスでは、アデニリルシクラーゼ活性のレベルが上昇していた。ノックアウトマウスの海馬領域において、さまざまなシナプス可塑性を解析したところ、野生型マウスでは早期かつ減衰性のLTPが形成される刺激条件下において、ノックアウトマウスでは後期(長期持続性)LTPが形成されたことが示された。以上より、アデニリルシクラーゼ活性の持続的な阻害が失われるとシナプス伝達効率が増強され、適切な記憶の形成に必要とされる、シナプス活性に依存する情報をコードする能力が阻害されると考えられる。

I. Mansuy, A constraint on cAMP signaling. Neuron 41, 4-6 (2004).

V. V. Pineda, J. I. Athos, H. Wang, J. Celver, D. Ippolito, G. Boulay, L. Birnbaumer, D. R. Storm, Removal of Gia1 constraints on adenylyl cyclase in the hippocampus enhances LTP and impairs memory formation. Neuron 41, 153-163 (2004).

英文原文をご覧になりたい方はScience Signaling オリジナルサイトをご覧下さい

英語原文を見る