感覚:カラシによる高揚

SENSATION:
Mustard High

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2004, Issue 216, pp. tw22, 20 January 2004.
[DOI: 10.1126/stke.2162004TW22]

要約 : カラシおよびセイヨウワサビは、侵害受容器(痛みを検知する感覚ニューロン)を脱分極させるイソチオシアナートにより刺激性を持つ。Jordtらは、カルシウムイメージング法を用いてアリルイソチオシアナート(カラシ油)の作用機序を調べ、ラットの三叉神経感覚ニューロンの約35%において細胞内カルシウムの増加を引き起こすことを見出した。また、δ9-テトラヒドロカンナビノール(THC、マリファナの精神活性成分)により活性化されるニューロンも、カラシ油に対して感受性であった。THC依存性、カラシ油依存性のカルシウムの増加は、一部の一過性受容体電位(TRP)ファミリーのカチオンチャネルを阻害するルテニウムレッドに対して感受性であることが、これらの化合物により発生する電流をホールセルパッチクランプ法で測定したことにより明らかになった。ラットまたはヒトANKTM1(TRPファミリーのチャネル)を導入したHEK 293細胞は、THCに加えて、カラシ油やその他の各種天然イソチオシアナート化合物に細胞内カルシウムの増加を伴った応答を示したが、カプサイシン(トウガラシの活性成分で、TRPV1カチオンチャネルを活性化する)には応答しなかった。同様に、イソチオシアナート、ワサビおよびカラシ抽出物、THCはいずれも、ANKTM1を発現しているアフリカツメガエル(Xenopus)卵母細胞において、電流を発生させた。これらのデータは、THCおよびカラシ油が、TRPファミリーのチャネルであるANKTM1が関与する同様の機構を介して、同じ感覚ニューロンを活性化していることを示唆するもので、これにより、TRPチャネルのカンナビノイド受容体としての役割を示したこれまでの研究が裏付けられる。

S.-E. Jordt, D. M. Bautista, H.-H. Chuang, D. D. McKemy, P. M. Zygmunt, E. D. Hogestatt, I. D. Meng, D. Julius, Nature 427, 260-265 (2004).

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