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学習と記憶 長期記憶を獲得(notch up)する

LEARNING AND MEMORY:
"Notch"ing Up Long-Term Memories

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2004, Issue 220, pp. tw59, 17 February 2004.
[DOI: 10.1126/stke.2202004TW59]

要約 : 膜受容体であるNotchは、中枢神経系における重要な発生制御因子である。また、最近の研究結果により、Notchは成人の神経系でも働いている可能性があることが示されている。Presenteらは、ショウジョウバエ(Drosophila)の温度感受性Notch対立遺伝子を用いて、許容温度においてNotchの発生段階での機能を正常に行わせたのち、そのタンパク質を欠損させた成虫におけるニューロンの機能を調べるという方法で、ハエ成虫におけるNotchの役割を解析した。短期および長期記憶形成に関する行動テストを、野生型ハエおよび変異ハエに対して行ったところ、短期記憶はNotchの欠損による影響を受けなかったものの、長期記憶は、生殖非応答性の雌への曝露、匂いと不快な電気ショックとの連想のいずれの場合も影響を受けた。著者らは、これらの知見が意味する興味深い点について議論している。長期記憶には、シナプスの物理的リモデリングが必要であると考えられ、こうした現象には、発生期に及ぼされるものと同様のNotchの作用が必要とされる可能性がある。また、家族性アルツハイマー病に関連するpresenilin遺伝子は、Notchシグナル伝達において機能するタンパク質をコードする。記憶の欠損はアルツハイマー病の著名な症状であることから、Notchシグナル伝達が学習および記憶に影響する機構をさらに探索することも、アルツハイマー病の病態の理解につながるかもしれない。

A. Presente, R. S. Boyles, C. N. Serway, J. S. de Belle, A. J. Andres, Notch is required for long-term memory in Drosophila. Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 101, 1764-1768 (2004).

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