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受容体 ソルチリンは死の側面に関与する

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Sortilin Weighs In on the Side of Death

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Sci. STKE, Vol. 2004, Issue 222, pp. tw76, 2 March 2004.
[DOI: 10.1126/stke.2222004TW76]

要約 : 神経成長因子(NGF)およびその前駆体であるproNGFは、ニューロンの受容体に結合して細胞の生存や分化、死を促進する(Kaplan and Miller参照)。NGFまたはproNGFと相互作用する二種類の受容体は、Trkファミリーおよびp75NTRの一員である。Trkはニューロンの増殖および分化に関与し、p75NTRは細胞死応答および増殖・生存応答の両方に関与する。Nykjaerらは、生や死の応答が、proNGFおよびp75NTRと複合体を形成する受容体ソルチリンの存在により決定されるという証拠を示している。NGFやproNGF、または切断されると成熟NGFを産生するproNGFの一部とグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)の融合タンパク質(GST-pro)と、TrkA、p75NTR、ソルチリンという3種類の受容体との結合を表面プラスモン共鳴により評価したところ、ソルチリンだけがGST-proに結合し、ソルチリンはproNGFに対して最も高い親和性を示した。形質移入細胞において、ソルチリンは、他の2種類の受容体が存在する場合も存在しない場合も、proNGFのエンドサイトーシスを促進した。ソルチリンおよびp75NTRが共に発現すると、proNGFの表面結合は、いずれかの受容体が単独で発現している場合に比べて増加した。架橋実験により、proNGFはソルチリンおよびp75NTRと複合体を形成するがNGFは複合体を形成せず、また、ソルチリンおよびTrkAとは複合体を形成しないことが示された。proNGFの存在によりp75NTRとソルチリンとの相互作用は増加し、細胞における両受容体の存在は、形質移入または内因性発現のいずれかを介してproNGFの高親和性結合と相関していた。細胞死の活性化といったproNGFの生物学的作用は、ソルチリン発現細胞を他のソルチリンリガンドであるニューロテンシンやGST-proへ曝露したことにより阻害された。ソルチリンまたはp75NTRが欠損すると、proNGF処理により誘導される細胞死が阻害された。以上より、成熟NGF、proNGFという2種類のリガンドと共同で作用する3種類の受容体は、NGFシグナル伝達の生物学的結果を決定すると考えられる。

D. R. Kaplan, F. D. Miller, A move to sort life from death. Nature 427, 798-799 (2004).

A. Nykjaer, R. Lee, K. K. Teng, P. Jansen, P. Madsen, M. S. Nielsen, C. Jacobsen, M. Kliemannel, E. Schwarz, T. E. Willnow, B. L. Hempstead, C. M. Petersen, Sortilin is essential for proNGF-induced neuronal cell death. Nature 427, 843-848 (2004).

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