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生理学 オーファン核受容体は、脂肪に対抗する能力を示す

PHYSIOLOGY:
Orphan Nuclear Receptor Shows Fat-Fighting Potential

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2004, Issue 232, pp. tw163, 11 May 2004.
[DOI: 10.1126/stke.2322004TW163]

要約 : 肥満との闘いは、食事量を減らすことによって解決できる、比較的容易な問題であると考えられている。ところが、多くのダイエット経験者から分かるように、身体は、空腹時や低カロリー摂取時の体重減少を緩和しようとする恒常性維持機構によって、この努力と反対に働くことがある。ここで何が起きているかといえば、内分泌機構が基礎代謝率を低下させることによって、エネルギー消費量を減らす(そして、脂肪の減少を減らす)よう補償しているのである。Maglichらの新たな研究によって、この補償機構を無効にし、空腹時の体重減少を促進できる可能性がある機構が提示されている。著者らは、かつて生体異物を感知し、解毒酵素およびトランスポーターの発現を調節する機能を持つことが示された、オーファン核受容体であるCAR(別名NR1I3)も、甲状腺ホルモン代謝を制御する上で重要な役割を担うことを示している。この知見の重要性は、甲状腺ホルモンの循環濃度の減少こそが、空腹時にみられる代謝率の低下を引き起こすことにある。野生型マウスをCARの薬理学的活性化因子で処理したところ、血清中甲状腺ホルモン濃度が減少したが、こうした変化はCar-/-ノックアウトマウスにはみられなかった。予想されたとおり、マウスを24時間絶食させたところ、循環甲状腺ホルモン量は減少したが、Car-/-マウスの場合、循環ホルモン量の減少は有意に少なかった。また、マウスに、カロリー摂取を12週間、40%減少させるという減量計画も行った(この計画を家で試さないこと)。この場合、Car-/-マウスは野生型マウスに比べ、2.5倍の体重減少がみられた。著者らは、CARは体重減少を妨げる機構の重要な構成要素であるのではないかと述べている。以上のことは、CAR作用の阻害剤によって、食物摂取量と代謝率を切り離し、カロリー摂取制限時の体重減少を促進できる可能性を示すものである。

J. M. Maglich, J. Watson, P. J. McMillen, B. Goodwin, T. M. Willson, J. T. Moore, The nuclear receptor CAR is a regulator of thyroid hormone metabolism during caloric restriction. J. Biol. Chem. 279, 19832-19838 (2004)

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