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代謝 古いサイクルの新しい回転

METABOLISM:
A New Spin on an Old Cycle

Editor's Choice

Sci. STKE, Vol. 2004, Issue 234, pp. tw184, 25 May 2004.
[DOI: 10.1126/stke.2342004TW184]

要約 : オーファンGPCR(ヘテロ三量体グアニンヌクレオチド結合タンパク質(Gタンパク質)共役受容体)の天然リガンドの探索において、Heらは、細胞代謝と細胞シグナル伝達との予想外の関連ならびに、代謝疾患の発病に対する興味深い関係を明らかにした。燃料分子が分解されてエネルギーとCO2が発生するクエン酸サイクルは、ミトコンドリア内で生じる。ところが、クエン酸サイクル中間体は血液中にマイクロモル濃度で存在し、その濃度は呼吸や代謝だけでなく、腎臓による吸収や排出によっても調節される。Heらは、オーファンGPCR GPR91を発現している細胞を活性化する化合物を精製し、その化合物をクエン酸サイクル中間体であるコハク酸塩であると同定した。ヒトGPR91を安定に発現している293細胞に投与したところ、コハク酸塩は細胞内カルシウムおよびイノシトールリン酸の増加を誘発し、細胞外シグナル制御キナーゼを活性化し、アデノシン3’,5’-一リン酸の生成を阻害した。これらのデータは、百日咳毒素に対する感受性とあわせて、GPR91のクエン酸刺激が少なくとも2つのGタンパク質が介するシグナル伝達経路(GiまたはGo、ならびにGq)を活性化することを示していた。第二のクエン酸サイクル中間体であるα-ケトグルタル酸塩は、近縁のオーファンGPCR GPR99を介してGq経路を活性化していた。GPR91およびGPR99のmRNAは、主に腎臓に局在化しており、コハク酸塩を静脈内投与したところ、ラットにおいて血漿レニン活性および平均動脈圧の増加を誘発した。マウスの場合、コハク酸塩の血圧に対する影響は、GPR91の発現に依存していた。以上より、コハク酸塩およびα-ケトグルタル酸塩は、それぞれGPR91、GPR99のリガンドとしての役割を持ち、その結果、コハク酸は細胞代謝と血圧の制御とを関連づけると考えられる。

W. He, F. J.-P. Miao, D. C.-H. Lin, R. T. Schwandner, Z. Wang, J. Gao, J.-L. Chen, H. Tian, L. Ling, Citric acid cycle intermediates as ligands for orphan G-protein-coupled receptors. Nature 429, 188-193 (2004).

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